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第4話

試験が始まった。

携帯電話は、かばんの中にあった。

でも、試験の最中に時を止めるつもりはなかった。


考えなかったわけではない。

時を止めてカンニングをすれば、クラスで一番の成績をとれる。

でも、和人はそれだけはしたくなかった。

そんなことをしても何の意味もないということがわかっていた。

それに、自分だけが時を止めて十分な勉強時間を得ることができたということだけでも、クラスメイトに対してかなりの後ろめたさを感じていたのだ。


1時間目数学、2時間目英語、昼食をはさんで3時間目社会、4時間目保健体育と、あっという間に1日目の試験が終わった。

和人は十分な手ごたえを感じていた。

今日の4教科だけを考えれば、クラスで5位以内に入っているかもしれない。

そして明日のテストでさらに良い点が取れれば、1位だって夢ではない。

(よし、今日も納得がいくまでガンガン勉強しよう。そのための時間は十分にある。)

昨日の和人の心境がうそのようだ。

(そうだ、1時間くらいなら英に付き合ってやってもいいな。)

和人は隣のクラス(2組)の英を探した。

2組は和人のクラスの1組よりも3分程先に下校していた。

(たぶんすぐに追いつけるだろう。)

和人は英に追いつこうと急いだ。

十数人追い越し、やがて前方に英の姿が見えてきた。

英と同じ2組で和人とも仲がいい前川徹也がいっしょだ。


「よっ英、記憶は戻ったか?」

和人が追いついたと同時に話しかけた。

「ん、ああ、だんだん思い出だしてきたよ。」

英が笑顔で答えた。

「記憶って、何の事?」

徹也が不思議そうに尋ねた。

「今朝、英のやつ自分の下駄箱がどこなのか覚えてないっていうんだよ。」

「なに、もうボケの兆候が出てきたの?英は人の何倍も頭使わないもんな。」

「余計な御世話だ。」

英が徹也の顔の前にこぶしを突きつけて言った。

「ところで英、今日なら1時間くらい付き合ってもいいぞ。」

「何を?」

「サッカーに決まってるじゃないか。」

「ああ、サッカーか。でも明日も試験があるしな。」

和人と徹也が顔を見合わせた。

「まさか英、帰って勉強するつもりじゃないだろうな。」と徹也。

「そりゃあ俺だって試験の前日ぐらい勉強するさ。」

和人と徹也はまた顔を見合わせた。

「ほら徹也、やっぱりおかしいだろう。」

「絶対におかしい。英、熱でもあるんじゃないか。それとも俺は夢を見ているのか。」

「大げさだよ。とにかく、俺は帰って勉強すんの。じゃあな。」

英は二人に向かって軽く手を挙げると、前川サイクリング店の角を左に曲がった。

和人は立ち止まり徹也に向かって「どう思う?」と訊いた。

「そうだな。」

徹也はちらっと空を見上げて、

「明日は雨だな。」

にっこり笑い「じゃあ。」と、前川サイクリング店へ入って行った。

そこが徹也の家だった。

「じゃあな。」和人は、横断歩道を渡り始めた。

(そうだ、何か食べ物を買っておいた方がいいな。)

そう思いつくと、帰り道の途中にあるコンビニエンスストアに入り、菓子パンとジュースを買った。


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