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第37話

「止血をしたのは君たちかい?」

桑田の腕をゴムチューブできつく縛っている救急隊員が英と和人に話しかけた。

「英がしました。」

和人が英を指さした。

「タオルではきつく締めるのは難しいんだ。このゴムチューブなら簡単だけどね。でも、よく縛っている。しかも足をあげて頭を低くしていた。応急処置は上等だ。・・・誰かに訓練を受けたのかい?」

「保健体育で習ったことがあるような気がします。」

「そうか、でも実践できるなんてすごいぞ。救急隊員になったらどうだ。」

「はあ。」

英が少し照れたような表情をしたが、すぐに言葉をつづけた。

「桑田は大丈夫でしょうか?」

「意識はしっかりしている。病院に着くのがよほど遅くならない限り、大丈夫だろう。」

救急隊員がほほ笑んだ。

「本当ですか?」

和人と英が同時に言った。

「それもこれも君たちのおかげだ、感謝状ものだぞ。」

助手席に座っている隊員が振り向きながら言った。


救急車は滝川病院に到着した。

第2体育館を出発してから5分ちょっとしか経っていない。

普通の車で法定速度を守りながら走ると10分はかかるのだが、救急車はさすがに早かった。

桑田はすぐに手術室に運ばれた。

英と和人も手術室の前に行こうとしたが、救急隊員に呼び止められた。

「患者さんのこととかいろいろと教えてくれないか。調書に書かなきゃならないからね。」

二人は聞かれるままに質問に答えた。

「いろいろとありがとう。これで大体のことはわかったよ。ただ、患者さんの電話番号と通報者だけが不明なんだよな。誰が119番したのか君たち知らないかい?」

「たぶん松永じゃないですか。真先に民家に走って行ったから。」

和人が答えた。

「木へんの松に永久の永で松永君だね。下の名前は?」

「秀樹。優秀の秀に樹木の樹です。」

「そうか、じゃあ後は患者さんの電話番号だけだな。」

「それは・・・。」

その時顧問の楠田が走ってくるのが見えた。

「今先生が来ました。先生なら分かるかもしれません。」

「そうか、じゃあ先生に聞くとしよう。」

そこへ楠田がやってきた。

額から汗が噴き出している。

「橘、桑田はどこだ?」

「今手術室に入っています。」

「で、どうなんだ、容体は?」

「たぶん大丈夫じゃないかって、この人が・・・。」

楠田は救急隊員の方を見た。

「どうもすみませんでした、監督不行き届きで・・・。桑田は・・・、本当に大丈夫なんでしょうか?」

「確証はありませんが、まだ意識がありましたので、大丈夫ではないかと思います。」

「はあ~、よかった!」

楠田はへなへなとその場に座り込んだ。

肩で息をしている。

「まだ安心はできませんよ、あくまでも私がそう思っただけですから。ところで先生、この二人の生徒さんにいろいろと話を伺ったんですが、患者さんの電話番号がわからないんですよ。」

「それは、学校へ電話すればすぐにわかると思います。教頭先生がいましたから。」

楠田が携帯電話で学校に電話をし始めるのを見て、和人と英は、手術室の方へ向った。

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