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第21話

日曜日の朝がきた。

今日の試合に勝てば、ついに決勝進出だ。

この県西部地区対抗戦での緑丘中の成績は、今のところ上出来と言ってよかった。

バスケット男子、卓球男子、卓球女子、それにサッカー部がベスト4に勝ち進んでおり、その他の種目ではバレー女子がベスト8になっていた。

各競技での採点は優勝20点、準優勝15点、3位13点、4位11点、5位~8位8点となっており、緑丘中は現時点で52点となる。

これは参加18校中、堂々3位の成績だった。

1位は県内随一のマンモス校、奥山中の60点で、2位浜里中55点、4位川原中49点と続く。


「高浜中は県大会予選で負けた相手だな。みんなあの時の悔しさを思い出せ。うちのチームは確かに強くなっている。だが、向こうもさらに強くなっているに違いない。おそらく力は五分と五分。実力が拮抗した試合でものをいうのは何だと思う?」

楠田の問いに選手全員が顔を見合わせた。

「それは絶対に勝つ、という強い思いだ。」

楠田はグラウンドの周りを見渡したあと続けた。

「今日は応援もいっぱい来てくれているぞ。応援に来てくれたみんなのためにも、今日は絶対に勝つ。いいか!」

「はい!」

総合優勝の可能性が強まってきたということで、グラウンドの周りは緑丘中の生徒が大勢応援に来ていた。

高浜中の応援の2倍以上だった。


「先制点をとって相手をビビらせようぜ。」

円陣を組んですぐに清水が言った。

「いいですね。高浜はうちが強くなったことを知らないんじゃないですか。」

「松永、俺たちは1回戦で葉山中に勝ったんだから、高浜はきっと警戒してくるぞ。攻めるのはいいが、ディフェンスもしっかり頼むぜ。」

英がくぎを刺した。

「緊張感のない顔だな、和人。」

清水が少しにやけている和人を冷やかした。

「だって仕方ないだろ、全然負ける気がしないんだから。みんなもそう思わないか。」

皆が顔を見合せて笑った。

「確かにな。じゃあサクッと勝って決勝へ進もうぜ!」

「おう!」

清水の掛け声に呼応し、選手がグラウンドに散った。



キックオフ直後に高浜中の度肝を抜くプレーが起きた。

清水がキックオフのボールを松永へパスし、松永は後方の英にボールを戻す。

そして英は、何と、― シュートした。

ボールは清水の頭上を越えて相手ゴールへ。

前に出ていた相手のキーパーが慌ててゴールの方へ下がる。

だが、間に合わなかった。

ボールはゴールのほぼ中央上部に見事に突き刺さった。

両手を突き上げた英に、和人が駆け寄ってハイタッチ。

他のチームメイトが次々に英に飛びついてきた。

グラウンドの周りを取り囲む応援団が大きな歓声を上げた。

開始5秒の出来事だった。


「ちくしょう、涼しい顔をして狙ってやがったのか?」

清水が英の背中をポンと叩いた。

「たまたまキーパーが出ていたからとっさにシュートしたんだ。最初はサイドにはたこうと思っていたんだぜ。」

「何が『ディフェンスもしっかり頼むぜ』ですか。自分は攻める気満々じゃないですか!」

松永が冷やかす。

興奮が冷めないまま、相手のキックオフが始まった。

英はふと和人の方を振り向いた。

すると和人が右手を軽く上げた。

(まかせとけって、ディフェンスは手を抜かないよ。)

英が頷いた。


ゲームは終始緑丘中のペースだった。

緑丘中は前半終了間際に1点、後半にも1点を入れ、3対0で高浜中を下した。

「松永、こんなところにいたのか、監督が探していたぞ。」

ゲーム終了後、和人は、水道の水で右足を冷やしている松永を見つけた。

「はい、すぐに行きます。」

「お前足をどうかしたのか?」

「ちょっと足首を捻挫したみたいです。でも大したことないと思います。」

「そうか、ひどいようだったら監督に言うんだぞ。」

「はい、ありがとうございます。」

和人と松永はみんなのところへ歩き出した。

松永はほんの少しびっこをひいていた。

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