表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/99

第14話

それは対抗戦初戦の1日前の出来事だった。

授業がすべて終わった後、和人たちサッカー部は軽めの練習を行っていた。

軽く汗をかくことと、これまでやってきたコンビネーションや、ポジショニングを確認することがその日の狙いだった。


30分ほど過ぎたとき、教頭先生が血相を変えてグラウンドに走ってきた。

「楠田先生、ちょっと。」

言いながら顧問の楠田の方へ寄って行き、何やら話しかけた。

すると、楠田は大きな声で和人を呼んだ。

「橘、こっちへ来い!」

「はい。」

和人が近付くと楠田は言った。

「教頭先生と一緒に、すぐに滝川病院へ行け。お母さんが意識不明の重体だそうだ。」

「えっ…」

「急いで着替えてこい。気をしっかり持つんだぞ。」

「は、はい。」

和人は部室へと走って行き、すぐに着替えて教頭先生と駐車場の方へ行った。


楠田はサッカー部員を集めた。

「実は、橘のお母さんが倒れて病院に運ばれた。病名とかはっきりしたことはわからんが、意識不明の重体だそうだ。私もこれから病院へ行ってみる。」

部員は誰も口を開かず楠田の話を神妙に聞いていた。

「明日の試合だが…、おそらく橘は出られないだろう。橘のポジション、スイーパーの位置には澤田が入れ。左サイドバックは…。」

「先生、そこには桑田がいいと思います。この半月ずっとそのポジションを練習してきましたから。」

英が進言すると、

「そうか、じゃとりあえずそれでいこう。明日の集合時間はわかっているな、校門前に8時だ。清水、後の練習は任せたぞ。」

そう言うと楠田も駐車場の方へ走って行った。


「橘先輩が出れないのはやばいですよね。」

2年の松永が切り出した。

「いや、まだ出られないと決まったわけじゃない。お母さんの意識が戻るかもしれないしな。」

と清水。

「仮に意識が戻ったとしても、出られないと思う。清水、桑田を入れてちょっとディフェンスの練習をしてみようぜ。」

英がそう言うと、

「冷たいなあ英、お前と和人は親友だろ?」

「親友だけど、どうにもならないじゃないか。それとも試合を欠場するか?」

「欠場するわけないだろ、こんなに練習したのに。わかったよ、まあ最悪のことも想定しないとな。よし桑田を入れて練習するぞ。」

それから1時間ほどディフェンス中心の練習が行われた。


桑田の動きには、誰もが目をみはった。

実に危なげない動きで、ほとんどミスがなかった。

「すごいじゃないか桑田、これなら十分いけるぞ。」

清水が太鼓判を押した。

「だが、自慢のオフサイドトラップは封印だ。こればっかりは練習できなかった。だから明日の試合はたぶん相手に押し込まれる場面が多いと思うんだ。そこを耐えてカウンターで一気に攻める。少ないチャンスを確実に決めなければならないから、清水、お前の出来が大きく試合を左右するぞ。」

英が言った。

「任せとけって。ディフェンスの裏を突くのは自信があるんだ。あとは英や松永が俺にドンピシャのラストパスを出せばいいんだ。」

清水は自信満々だ。

「そのラストパスが難しいんですけどね」

松永が困ったような顔をして言うとみんなが笑った。

「よし、今日はここまで。体操して終ろう。」


こうしてその日の練習は終了した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ