ピクニック
三題噺もどき―きゅうひゃくよんじゅういち。
美しい青空が広がっている。
所々に薄い雲がベールのようにかかり、太陽は温かさだけをくれる。
空の青はどこか涼しさを感じ、秋の訪れを告げているように思える。
「どこにするー?」
足元には、背の低い草が広がり、どこまでも続いている。
間を区切るように橙色の歩道が作られ、格子模様のようになっている。
そこを走る小さな自転車や、歩く子犬たちはとても可愛らしい。
「この辺で良い?」
広がる草原の、所々に植えられているのは大きな木。
秋になるとこれは茶色に染まり、冬には枝を広げているばかりになる。
歩道沿いには桜の木があり、これは春になれば桃色に染まる。
「んしょ、」
手に持っていた荷物を、木の根元に置く。
ごつごつとした太い根は、この木がどれだけここに根付いているかを証明しているようだ。
今はまだ青々とした葉をたたえて居る木の影は、とても心地がいい。
「シートは?」
座るための、レジャーシートを広げようと荷物を探したが見当たらず。
後ろを振り返る。
妹2人と、母と、父。
光の反射で顔があまりよく見えない。
「持ってるじゃん」
父の手元に、たたまれたレジャーシートを見つける。
それを受け取り、ふわりと広げる。
暗い影にオレンジ色の明かりがぼんやりと灯る。
5人で座るには少々手狭だが、問題はない。いつもこれだから。
「どこに座るの」
各々がシートの端よりに座り、母が中心にバスケットを置く。
我が家にこんなおしゃれなバスケットがあったのかと驚いた。
まぁ、こういうのを集めるのが好きだから持っていてもおかしくはない。
蓋を開けると、中には昼食が詰められている。
「何作ってきたの」
生憎私は調理には参加していないので、中身は知らない。
母と末っ子が張り切って?作っていた。
覗き込むと、我が家の運動会でよく見る3段の大き目な弁当箱が入っていた。
そこはおしゃれにサンドイッチとかではないのが、家らしい。
「広げて良い?」
弁当箱を取り出し、籠を一度端によけて置く。
弁当の蓋を広げれば、一段目には唐揚げやトマトなどのおかず。
二段目には、おにぎりが数種類、きっちりと詰まっている。
三段目には、りんごやなし、ブドウなど、様々な果物がキラキラと輝いている。
「おいしそ、」
漏れたその言葉に返すように、どこかから腹の虫が鳴いた。
はた、と、音のありかを探すと。
どうやら、私の腹が鳴っていたようだった。
もう一度、確認するように、くるくると変な腹の虫が鳴る。
「…っぷ、ははww」
自分のことなのに、耐えきれずに笑ってしまう。
父も、母も、妹までつられて笑う。
笑いながらも、さあさあ食べようと各々手を伸ばしていく。
―ずっと、顔だけは見えない。
「んふw」
未だ落ち着きそうにない笑いをこらえながら。
私もおにぎりを食べようと手を伸ばす。
あぁ、その前に飲み物が欲しい。
「コップ……」
持ってきたはずの紙コップを探すべく、木の根元に置いた鞄を探る。
影になっているせいか、やけに中身が見えづらい。
ちらりと入り込んだ光に当たり、それらしき白い塊が見えた。
「あっ……た」
それは、紙コップなどではなくて。
私がいつも使っているスマホだった。
―いつも使っている?私はまだスマホを持てる年齢じゃない。我が家は高校に入ってからと決まっている。私はまだ、中学生で
「……」
枕元でスマホが震える。
鬱陶しいアラームを止めながら、記憶を振り返る。
―いい、思い出だ。
お題:りんご・オレンジ・バスケット




