特に用事がない日、家で寛いでいると意外なものを見てしまい……?
その日は特に用事がない日だったので家で寛いでいたのだけれど、夕暮れ時窓の外をぼんやり眺めていると婚約者である彼ダブが女性を連れて歩いているところを目撃してしまい、急いで立ち上がり彼を追った。
「ダブさん!」
「……ぁ」
声をかけると気まずそうな顔をするダブ。
その表情にすべてを察する。
隣にいる女性が問題ある関係の女性でなかったならば彼はこんな顔はしないだろう、そこから真実を読み取り理解した。
「や、やぁ。こんなところで会うなんて珍しい。お出掛け中かい?」
「窓を眺めていたらお見かけしたので」
「追ってきたのかい?」
「ダブさんがこの辺りを歩いているいらっしゃるのは珍しいな、と思いまして」
笑みを向ければ、彼はより一層気まずそうな面持ちになる。
「そちらの女性は?」
「あ……ち、違っ……違うんだ」
「何も言っていませんけど」
「ああっ、ご、ごめん、けど……本当なんだよ、彼女とは何もない、いかがわしい関係とかじゃないんだ」
するとやがて彼の隣にいる女性が「あんたが婚約者?」と尋ねてきた。偉そうな態度に困惑しつつも「はい、そうですけど」と返せば、彼女はぷっと吹き出す。それから、少し馬鹿にしたような視線をこちらへ向けて、長い睫毛に囲まれた目を数回ぱちぱちさせてから「女らしさ皆無ね」と小さく毒を吐いた。
「ダブはあたしのことが好きなの。婚約者だか何だか知らないけれど、彼はあんたのことを愛してはいないわ。だから身を引いて? あんただって、愛されていないのに婚約し続けるとか惨めで嫌でしょ」
さらにそんなことを言われてしまって。
「あんたはあんたに相応しい人と結婚するべきよ」
しまいにはそこまで言われてしまい。
「あたしたち、愛し合ってるの。ダブとあんたとの関係みたいな形だけの関係じゃないから」
どうしようもなかったのでダブの方へ視線を向ければ。
「ダブさん、何ですかこれ」
「ごめん……」
ついに彼は謝った。
「婚約者がいる身でこんなことをするのは問題ですよね」
「あ、ああ、ごめん……」
「ごめんで済む問題ではありません。……後日きちんと話し合いましょう」
はっきり言ってやれば、彼は急に声を大きくして「待って! 言い広めるつもりかい!? やめろよ! そういうの!」と叫んでくるが、そんな自分勝手な主張は無視だ。
◆
あの後、改めて正式な話し合いの場を設けることとなり、ダブとの婚約は破棄とすることとなった。
彼も彼の両親も外向きの印象をかなり気にしていて「婚約破棄だけはやめてほしい」と言っていたけれど、私側の両親が味方してくれたこともあり、何とか婚約破棄にまで話を持ち込むことができた。
また、それが事実ではあるのだが、私側に非は一切ない婚約破棄という形での婚約破棄となったので、その点もとても良かったと思う。
加えて、ダブとその浮気相手だった女性、双方から慰謝料を取ることにも成功した。
……父の友人にそういったことに詳しい人がいたことは幸運なことだった。
◆
あれから三年。
私は穏やかな日常を手に入れている。
父の紹介で知り合った青年と何度か顔を合わせ、そのうちに段々仲良くなり、やがて同じ未来を見つめるようになり、結婚した。
ちなみにダブと女性はというと、あの後私の件でかなり揉めたよう。そしてすぐに破局したそう。彼女の言っていた愛とやらは小さなことで呆気なく壊れてしまうものだったようだ。
また、破局後も幸せには出会えなかったようである。
ダブは私との件で親と揉め勘当されるところまでいってしまったらしい。
思わぬ形で行き場をなくした彼はやがて自ら命を捨てたのだとか。
女性はダブと別れた後他の男性に猛アプローチし始めたそうだが、その男性が実は既婚者で、それによってまたしても揉め事に巻き込まれてしまったそう。で、またまた慰謝料を支払わされることもなってしまって。加えて、男性の奥さんにその件を言い広められてしまったこともあり、女性は、命こそ落としてはいないものの社会的には終わってしまったようである。
◆終わり◆




