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シーン10:破壊の停止
世界は、止まった。
街は消えかけていたが、今は静止する。
道路も、建物も、人々も、すべてが一瞬、息を潜めたかのように。
主人公は、立っていた。
手はまだ震えている。
体は動かない。
無意識に続けていた破壊も、今は止まった。
理由は、ただ一つだった。
彼女の声。
「私は、鹿間くんを、殺したくない」
その一言が、世界を貫いた。
破壊の意思は、揺らぎ、溶けて、消えた。
世界を滅ぼすはずだった力は、ただの重力のように落ち着いた。
主人公は、理解できなかった。
迷い、困惑し、初めて心が揺れる感覚。
怒りでも憎しみでも悲しみでもない。
ただ、分からない。
破壊神は、迷った。
初めて、力を制御できず、判断できず、立ちすくむ。
ヒロインは、まだ目の前にいた。
銃も、命令も、もう必要なかった。
彼女の意思だけが、残っていた。
世界は、止まったまま。
そして、二人だけが、残った。
ここで、第4幕は幕を閉じる。
破壊の意思と救いの意思が、世界の上で、初めて交差した瞬間だった。




