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君だけが壊せなかった  作者: 南蛇井


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31/39

シーン8:ヒロインの任務

ヒロインは、


銃を向けていた。


両手で、


しっかりと。


訓練通りの姿勢。


照準は、


ぶれていない。


その先にいるのは、


世界を破壊している存在。


対象A-17。


排除対象。


人類の敵。


――鹿間斎。


主人公は、


動かなかった。


逃げない。


隠れない。


防ごうともしない。


ただ、


そこに立っている。


そして、


言った。


「それでいい」


静かな声だった。


責める響きは、


なかった。


「それが正しい」


肯定だった。


命令を。


任務を。


彼女の存在理由を。


主人公は、


ゆっくりと、


目を閉じた。


抵抗は、


しない。


受け入れていた。


自分の終わりを。


ヒロインの指が、


引き金にかかる。


力を込める。


撃てる。


撃てるはずだった。


この距離。


この精度。


外すことはない。


終わらせられる。


全てを。


任務を、


完了できる。


指に、


力を込める。


――込める。


――込める。


だが。


それ以上、


動かない。


止まる。


まるで、


見えない何かに、


掴まれているように。


呼吸が、


乱れる。


なぜ。


撃て。


撃て。


撃て。


頭の中で、


命令が繰り返される。


だが、


体が、


従わない。


主人公は、


目を閉じたまま、


微動だにしない。


完全に、


無防備だった。


信じているわけではない。


期待しているわけでもない。


ただ、


終わりを、


受け入れているだけだった。


それが、


分かってしまう。


ヒロインの視界が、


揺れる。


輪郭が、


滲む。


なぜ、


撃てない。


これは、


任務だ。


最初から、


そのために、


自分は作られた。


監視するために。


近づくために。


そして、


殺すために。


それなのに。


指が、


動かない。


震えるだけで、


引けない。


主人公の胸は、


すぐそこにあるのに。


心臓を、


止められるのに。


ヒロインの唇が、


わずかに開く。


声にならない、


空気だけが漏れる。


そして、


初めて、


理解する。


自分は――


撃ちたくない。


その事実を、


理解してしまう。


銃口は、


まだ、


向けられている。


だが、


引き金だけが、


永遠に、


引かれなかった。

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