シーン6:最終対峙開始
夕焼けは、
まだ終わっていなかった。
赤は、
ゆっくりと、
世界を侵食していた。
主人公は、
振り返る。
ヒロインは、
そこに立っている。
数メートルの距離。
近くもなく、
遠くもない距離。
その手には、
武器があった。
黒い、
無機質な拳銃。
両手で、
握っている。
銃口は、
まっすぐ、
主人公に向けられていた。
主人公は、
それを見た。
驚きは、
なかった。
恐怖も、
なかった。
ただ、
理解していた。
ああ、
そうか。
そういう物語だったのだと。
沈黙。
風が、
二人の間を通り過ぎる。
草が、
揺れる。
ヒロインの髪も、
揺れる。
だが、
銃口だけは、
揺れない。
やがて、
ヒロインの唇が、
わずかに動いた。
「……任務を、遂行します」
声は、
小さかった。
消え入りそうなほど、
小さかった。
それでも、
はっきりと、
聞こえた。
そして、
主人公は気づく。
震えている。
声が。
彼女の声が、
震えている。
ほんの、
わずかに。
主人公は、
彼女を見る。
その顔を、
見る。
表情は、
いつもと同じだった。
無表情。
感情のない、
監視者の顔。
だが、
違った。
完全ではない。
どこか、
壊れている。
主人公は、
静かに口を開いた。
「……それが、お前の答えか」
問いだった。
責めるでもなく、
怒るでもなく、
ただ、
確認するような問い。
ヒロインは、
答えない。
答えられない。
唇が、
わずかに動く。
だが、
言葉にならない。
銃は、
まだ、
主人公を向いている。
撃てる距離。
確実に、
終わらせられる距離。
それでも、
引き金は、
引かれない。
沈黙。
長い、
長い、
沈黙。
世界は、
二人だけになっていた。
他のすべては、
もう、
存在しない。
残っているのは、
破壊神と、
その安全装置だけだった。




