シーン5:河川敷(85%)
夕暮れだった。
空は、
世界が終わろうとしているとは思えないほど、
静かに赤かった。
河川敷。
風が、
乾いた草を揺らしている。
主人公は、
そこに立っていた。
一人で。
靴の下で、
草が音を立てる。
その音だけが、
やけに鮮明だった。
振り返る。
遠くに、
都市が見えるはずだった。
ビルも、
道路も、
橋も。
だが、
そこには、
何もない。
空白だけが、
広がっている。
世界は、
消えた。
自分が、
消した。
主人公は、
再び前を見る。
河川敷は、
残っていた。
草も、
土も、
川も、
夕焼けも。
すべて、
残っている。
主人公は、
ゆっくりと理解する。
――守っている。
自分が。
無意識に。
理由は、
考えるまでもなかった。
ここは、
始まりの場所だった。
初めて、
彼女と話した場所。
初めて、
自分が、
世界に触れた場所。
主人公の喉が、
かすかに動いた。
「……ここから始まった」
声は、
風に溶けた。
そのとき、
背後で、
草を踏む音がした。
一歩。
また一歩。
主人公は、
振り返らなかった。
振り返らなくても、
分かっていた。
この足音を、
知っている。
何度も、
何度も、
隣で聞いた音。
やがて、
足音が止まる。
数メートル後ろで。
沈黙。
長い、
沈黙。
夕焼けだけが、
二人を照らしていた。
主人公は、
目を閉じた。
そして、
ゆっくりと、
振り返った。
そこに、
彼女がいた。
ヒロインは、
立っていた。
消えていない、
この世界の中に。
まるで、
最後の現実のように。




