第3破壊(60%)
翌日の放課後。
空は、昨日と同じ色をしていた。
同じはずだった。
同じ河川敷。
同じ風。
同じ夕暮れ。
同じ彼女。
違うのは、
主人公だけだった。
彼女は、いつものように座っている。
草の上に。
膝を抱えて、
川を見ている。
主人公は、
少し離れた場所に立っていた。
近づくことが、
出来なかった。
足が、
動かなかった。
「……どうしたの?」
彼女が振り返る。
笑顔だった。
昨日と同じ、
笑顔。
それが、
遠かった。
「鹿間くん」
名前を呼ばれる。
その音が、
やけに鮮明に聞こえた。
主人公は、
口を開く。
何を言うべきか、
分かっていた。
ずっと、
考えていた。
あの画面を見てから、
ずっと。
「……お前は」
声が、
掠れる。
それでも、
止められなかった。
「お前は、何だ」
風が、
止まった気がした。
彼女の表情が、
動かなくなる。
笑顔が、
そのまま、
形を失う。
沈黙。
長い、
沈黙。
彼女は、
何も言わない。
視線を、
逸らさない。
主人公を、
見ている。
まるで、
何かを測るように。
やがて、
彼女の唇が、
わずかに動いた。
「……監視者です」
それだけだった。
それ以上は、
何も言わなかった。
言い訳も、
説明も、
謝罪も、
なかった。
ただ、
事実だけを、
置いた。
「……そうか」
主人公は、
それしか言えなかった。
胸の奥で、
何かが、
静かに、
壊れていた。
音はしなかった。
ただ、
確実に、
壊れていた。
彼女は、
そこにいる。
同じ場所にいる。
同じ距離にいる。
手を伸ばせば、
触れられる距離に。
それなのに、
遠かった。
昨日よりも、
ずっと。
手袋越しよりも、
ずっと。
遠かった。
主人公は、
気づく。
物理的な距離ではない。
もっと、
決定的な距離。
越えられない、
距離。
彼女は、
もう、
同じ世界の住人では
なかった。
いや、
最初から、
違ったのかもしれない。
風が、
また吹き始める。
草が揺れる。
彼女の髪が、
揺れる。
それを見ながら、
主人公は、
どこにも行けずに、
立ち尽くしていた。




