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君だけが壊せなかった  作者: 南蛇井


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15/33

シーン7:監視強化

 同時刻。


 河川敷から数キロ離れた場所。


 窓のない部屋。


 外界と切り離された空間。


 白い壁。


 白い天井。


 白い光。


 すべてが均一で、


 すべてが無機質だった。


 


 久世真白は、


 部屋の中央に立っていた。


 正面の壁には、


 巨大なモニター。


 そこに映っているのは、


 ひとりの少年の顔写真。


 無表情。


 黒い手袋。


 識別番号。


 その下に、


 文字列。


 


 ――対象コード:D-01


 


 真白は、


 報告書を読み上げた。


「定時観測報告を開始します」


 声は、


 感情を排除していた。


「対象コードD-01」


「危険度評価」


 一拍。


「――変化なし」


 モニターの光が、


 わずかに明滅する。


「破壊衝動レベル」


「基準値内」


「暴走兆候」


「確認されず」


 形式通りの報告。


 問題のない報告。


 安全な報告。


 


 だが。


 


 真白は、


 言葉を続けた。


 


「しかし」


 


 部屋の空気が、


 わずかに変わる。


 


「未確認要素を観測」


 


 モニターの画像が切り替わる。


 二人の姿。


 河川敷。


 並んで座る、


 少年と少女。


 


「対象は現在、特定個体との接触を継続」


「接触時における破壊現象」


「――未発生」


 


 沈黙。


 


 その沈黙の奥に、


 複数の人間の気配がある。


 姿は見えない。


 だが、


 見られている。


 


 監視されているのは、


 少年だけではない。


 


 真白もまた、


 監視されていた。


 


「原因は不明」


「現在も観測を継続中」


 


 報告は、


 そこで終わるはずだった。


 


 数秒の沈黙。


 


 そして。


 


 スピーカーから、


 声が流れた。


 


『――確認した』


 


 低い声。


 抑揚のない声。


 


『危険度評価に変更なし』


 


 当然の結論。


 


『対象コードD-01は』


 


 一拍。


 


『依然として』


 


 わずかな、


 間。


 


『人類存続に対する』


 


 決定的な、


 宣告。


 


『――最上位脅威である』


 


 真白は、


 瞬きをしなかった。


 


『未確認要素は』


『例外ではない』


 


 断定。


 


『例外は』


 


 そして、


 冷酷な、


 定義。


 


『排除される』


 


 モニターの光が、


 白く、


 強くなる。


 


『排除準備を進めろ』


 


 命令。


 


 絶対の命令。


 


「……了解」


 


 真白は、


 答えた。


 


 それ以外の選択肢は、


 存在しない。


 


 通信が切れる。


 


 部屋は、


 再び、


 無音になる。


 


 モニターには、


 少年の顔。


 


 鹿間斎。


 


 その隣に、


 少女の姿。


 


 水無月ひかり。


 


 真白は、


 しばらく、


 それを見ていた。


 


 排除。


 


 その言葉の意味を、


 彼女は知っている。


 


 それは、


 隔離ではない。


 


 保護ではない。


 


 救済でもない。


 


 終わり。


 


 完全な、


 消去。


 


 存在の、


 否定。


 


 真白は、


 ゆっくりと、


 モニターに手を伸ばした。


 


 触れる直前で、


 止まる。


 


 触れない。


 


 触れることは、


 許されていない。


 


 彼女は、


 監視官だからだ。


 


 感情は、


 不要だからだ。


 


 モニターの中で、


 少年が、


 わずかに笑っていた。


 


 観測史上、


 初めての、


 変化だった。


 


 そして、


 それは、


 


 ――排除対象として、


 十分な理由だった。

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