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君逝く朝に  作者: 杉山薫
第一幕 さくらと龍之介 第一部 日記帳 第一章 橋本龍之介編
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第一話

 ボクの名前は橋本龍之介、高校二年生の陰キャのモブである。いやぁ、龍之介って完全に名前負けとしか言いようがない。

ボクの通う高校は家から片道一時間くらいのところにある。


なんで、そんな遠い高校を選んだかって?

はあぁ、もうあんたも人が悪いね。

決まってんじゃん。

変えたかったんだよ、自分を⋯⋯。

だから、知り合いがいない高校を選んだんだ。

だけど、何も変わらなかった。

陰キャのモブはどこへ行っても陰キャのモブ。

知り合いがいないから状況は中学よりも悪化した。

ボッチ!

ボッチほど学生生活で惨めなものはない。

 

 そんなボクにも癒しの時間があった。半日授業の日の昼食と平日の夕食は高校の近くにある定食屋に行く。ボクはこの店の常連だ。最近では座っただけで日替わり定食が出てくる。陰キャに優しい定食屋だ。でも、本当にボクの癒しになっているのは、ここのお姉さん。金髪なんだけど結構ボクの好きなタイプなんだ。挨拶程度の会話しかないけどボクにはそれがいいんだ。


 一学期の終業式の日、ボクはいつもの定食屋で昼食をとる。まあ、学食もやってるんだけどボクにはいつもの定食屋なんだ。店に入るなりボクは舌打ちをする。なんだ、オバサンかよ。ボクはいつものテーブルにカバンを置き、オバサンに日替わり定食を注文をした。とりあえずトイレ、トイレ。そう思いながらカバンからスマホを取り出しトイレに向かった。トイレから帰ってくると、いつものお姉さんが店に出ていた。


クソ、早すぎた!


ボクはそそくさと日替わり定食を食べて会計をする。


「いつも、ありがとう。明日から夏休みでしょ。しばらく会えないね」


明日から夏休み?

なんで知っているんだろ。

まあ、他の学生から聞いているだろうな。


ボクはニコリと笑って店を出ていった。


 夏休み初日、ボクは呆然としていた。ボクのカバンの中に見知らぬ日記帳らしきものがあったのだ。どこで混入されたのだろう。


日記だろ、日記。

ボクだったら読まれたくないよな⋯⋯。

でも、仕方ない。


ボクは意を決して日記帳のページをめくる。


白紙。

白紙⋯⋯。

なんだよ。

全部白紙じゃねえか!

ビビらせやがって⋯⋯。


ボクはその日記帳を机の本立てに置いた。


 ボクには苦手な女生徒がいる。いや、そもそも陰キャのボクには、ほとんどの女生徒が苦手なのだが、一年の時から同じクラスの南ことみ、みんなからは委員長と呼ばれている。南さんはボクの出身中学校の隣の中学校の出身らしい。せっかく知り合いのいない高校を選んだのに⋯⋯。できれば南さんとは絡みたくないのだが、ことあるごとに南さんはボクに突っかかってくる。


勘弁してほしい⋯⋯。


 ボクが住んでいる街にも夏祭りはある。ボクは当然、そんなところには行かない。そんなところに行ってボッチになったら目もあてられない。ボクはいつも隣街の夏祭りに行っている。


そう、隣街だったらボッチで当然なのだ。


その年の夏休みのこと。

隣街の夏祭り。


なんで警戒しなかったんだろう。


暗がりで酒とタバコを嗜む男女数人の姿があった。陰キャにとってはこういう人種は天敵なのでボクは見ないふりをして立ち去ろうとした。


「おい、お前橋本だろ!」


聞き覚えのある女の声にボクは思わず振り返ってしまった。


えっ!


そこに立っていたのは南さんだった。


「お前、このことバラしたら⋯⋯。わかってんだろ。よし、出せ!」


南さんはボクにそう言って、自分のスマホをボクの前に出す。


最近のカツアゲって電子マネーなの?


ボクは挙動不審に南さんにサイフを差し出す。


「バカか⋯⋯。スマホだよ。ラインやってんだろ。スマホ出せよ」


ボクが仕方なくスマホを出すと南さんはボクのラインに友達登録をする。


怖いよ⋯⋯。


「私は逆高校デビューなんだ。私にも高校での立場があるんだよ。黙ってろよ。お前なんかより、高校では私の信用度のほうが上なんだぞ!」


知ってます⋯⋯。

スクールカースト最上位の南ことみ様。

終わったよ。

ボクの平穏な高校生活⋯⋯。


てか、逆高校デビューって何?

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