第五話
もうすぐ二月十四日がやってくる。そう、非モテ男がもっとも嫌う日。二月十四日はカレンダーから抹殺した方がいい。オレは家族以外からはヤンキー女どもからしかチョコをもらったことはない。ヤンキー女どもは高そうなブランドチョコを本命チョコだと言ってオレに渡してくるが、オレはアレが義理チョコだと知っている。いわゆる三倍返しのためにわざわざ高いブランドチョコを買ってくるのだ。そいつをたくさんばら撒いておけばホワイトデーでたくさん収穫できると思っているのだろう。オレはそいつらには一度も返したことはない。オレには信念がある。
本命チョコは本命チョコであることが重要なんだ。それが手作りチョコであろうと、ブランドもののチョコであろうと、チロルチョコ一個であろうと、男にとっては本命チョコ一個ということが重要なんだ。ブランドチョコでもばら撒いていたら、そんなもんは本命チョコではない。
今年は⋯⋯。
オレは日記帳を開く。
あの婚約報告以来、何の記載もないが、間違いなく貴子はここで日記帳を使ってくるだろう。今年の二月十四日は平日なのでデートではなく、貴子の部屋でまったりするのを希望してきた。
緊張する⋯⋯。
放課後、オレは誰もいなくなった教室で時間をつぶす。十七時にオレは貴子の家に行った。
なんでリボンを頭に付けてるんだろう?
すぐに貴子の部屋に通され、この間と同じく椅子に座らされた。貴子もこの間と同じくベットに寝転んだ。
この体勢だと貴子は自然とオレを上目遣いで見てくることになる。
これはそういう意味じゃない!
この体勢になると自然にそうなるんだ。
「辰之助って本命チョコもらったことはあるの?」
本命チョコって言われたチョコくらいもらったことはあるけど⋯⋯。
「本命チョコは本命チョコであることが重要なんだ。それが手作りチョコであろうと、ブランドもののチョコであろうと、チロルチョコ一個であろうと、男にとっては本命チョコ一個ということが重要なんだ。ブランドチョコでもばら撒いていたら、そんなもんは本命チョコではない。ってことで、オレは本命チョコはもらったことはない!」
オレの言葉に貴子は安堵しているようだ。
「それでね⋯⋯」
貴子はそう言って、ベットの下に隠してあったチョコを取り出す。包装紙を外してチョコを取り出してチョコくわえた。
「そうきたか⋯⋯。じゃ、いただきます」
えっ、何言ってんの?
オレ!
オレはそう言って貴子がくわえているチョコを食べながら、貴子の唇にキスをした。
その日、二月十四日はオレにとって初めてバレンタインデーになった。




