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君逝く朝に  作者: 杉山薫
第二章 橋本龍之介編
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第四話

 さあ、今日が勝負の日だ。ボクは昨日、新幹線のキスに動揺して何もできなかった。今日の自由行動こそ決めていかなきゃ、小林さんに嫌われてしまう。せっかく初恋の女性から告白されたのに。うちの班の自由行動はかなり余裕があるスケジュールになっている。まずは嵐山の渡月橋。


よしよし、計画通り!

外国人観光客でごった返している。


渡月橋を班のみんなで見学した後、予定通り近くのお土産屋さんにみんなで入った。


来た。

佐藤君からのアイコンタクト!


ボクは小林さんの右手を取り半ば強引に店の外に出て、小林さんに囁いた。


「二人で野宮神社に行こう」


ボクの言葉に小林さんは頷いて一緒についてきてくれた。


やっぱり、晩秋の嵯峨野。

風情がある。

こんなところを小林さんと手を繋いで歩けるなんて。


「ごめん、橋本君。私、手汗がすごいから一旦手を離して」


小林さんはそう言うと手をハンカチで拭き始めた。


コレってどっち?

ボクの手が汚いから拭いたのか、本当に手汗が気になって拭いたのか。

アレ!

ボクは手を拭いたほうがいいの、それとも拭かないほうがいいの。

もうヤダ!

また陰キャのネガな思考が頭を巡る。

もういい!


ボクは思い切って手をハンカチで拭いた。もう一度、手を繋ごうとすると小林さんはボクの左腕に抱きついてきた。


うわっ、小林さんあたってるあたってる!


ボクは放心状態のまま野宮神社に向かって歩いていく。やがて、野宮神社に到着した。恋人たちの聖地というだけあってカップルがたくさんいた。カップルが縁結びって必要あんのか。ボクたちもそうか。


小林さんと一緒に神社でお願い事をして。

内緒で持ってきた千円札を賽銭箱に入れる。


小林さんと添い遂げられますように⋯⋯。


せっかく千円札を入れたんだ。

このぐらいお願いしてもいいだろう。


その後、小林さんとお揃いの縁結びのお守りを買った。


だから、カップルで買って意味があるのか。


すると、小林さんがおみくじの方へと歩いていく。


やっぱり、女の子はおみくじとか好きなんだな。


おみくじも二人でやった。ボクが大吉で小林さんが小吉。


よし!

やってやる。


ボクは少し俯いている小林さんの手を取り境内の裏へと歩いていった。


 ボクは小林さんを境内の裏に連れ込んで思い切って抱きしめた。小林さんはびっくりした顔でボクを見つめる。


「小林さん、もうお試し期間はおしまいにしよう。ボクの初めての恋人になってください」


よし!

言っちゃった。


小林さんは黙ったままボクの唇にキスをした。


ん、コレって?

OKってことでいいだよね。

たぶん昨日のは夢だから、これがボクのファーストキスってことだよね。

うわっ、すごいロマンチック!


そのまま嵯峨野を散策して嵯峨野トロッコ列車の嵯峨野駅を目指す。


大丈夫。

これなら約束の列車に間に合う。

ミッションコンプリートは目前だ。


嵯峨野駅に近づくほどに小林さんの足は遅くなる。いや、遅くなるというより時々止まっては後ろに下がる。これでは十一時のトロッコ列車に乗れなくなってしまう。なんてたってトロッコ列車は1時間に1本しか出ない。次は十二時まで出ない。


困った。

仕方ない。

佐藤君に連絡取るか。


ボクはスマホを取り出す。班長の佐藤君からライン連絡がきていた。


『間に合いそうもないからBプラン』


スマン、佐藤君!

それから四條君、その通りでした。


「小林さん、佐藤君から連絡きてた。十二時のトロッコ列車で二人でゆっくり来ていいよって。どうせボクたちの班はゆったりしたスケジュールだしね」


ボクがそう言うと小林さんはニコリと笑うだけだった。ボクと小林さんが嵯峨野駅に到着したのは十一時半くらいだった。確かに嵯峨野路はロマンチックだけどこんなにゆっくりと歩かなくても⋯⋯。


ボクと小林さんは十二時の嵯峨野トロッコ列車に乗った。


確かにロマンチックだけど班行動を乱してまでここまでやる必要あったのかな。


嵯峨野トロッコ列車はロマンチックな空気のままトロッコ亀岡駅へとたどり着いた。確かJR馬堀駅の近くでみんなは昼食をとっているはずだけど。


ここから徒歩十分だから十二時四十分くらいに到着すると思いきや、これも四條君の予想通りの十三時到着。四條君は予見眼でも持っているのか。


ボクと小林さんはそこで班と合流して京都駅まで戻って昼食をとった。その後、無事JR稲荷駅に到着した。


ヨシ、これなら余裕で集合時間までに帰れる。


小林さんはそこまで甘くなかった。


 ボクたちは駅から伏見稲荷大社を目指し参道を歩いている。予定では本殿に参拝したあと伏見稲荷大社の全体をみんなで歩いて。


川崎君の予想通りだった。

四條君と川崎君はやっぱり予見眼を持っているのだろう。


小林さんはボクの左腕に抱きついてきた。いや、恋人同士なんだから全然問題ないんだけどね。一応、班行動なんだから⋯⋯。


他の四人との距離は開く一方。


仕方ない。

Bプランか。


ボクがそう思いながらスマホを開けると佐藤君からライン連絡がきていた。


『Bプランでいいよ。ごゆっくり』


面目ない。


「佐藤君から連絡があって、ゆっくりしていいよだって。でも、本殿の先の千本鳥居までは行きたいよね」


ボクがそう言うと小林さんはコクリと頷く。


そういえば、小林さんは嵯峨野ではスマホで写真撮ってなかったけど、写真とか嫌いなのかな。

アレ、歩くスピードが上がったような気がする。


そんなことを思っていると、あっという間に本殿にたどり着いてしまった。本殿に着くとボクと小林さんは参拝する。ボクはさっきと同じ千円札。神頼みしかない。


小林さんと添い遂げられますように⋯⋯。


小林さんはさっきと同じくおみくじのところへと歩いていく。ボクも一緒におみくじをひく。今回も大吉だ。観光地って大吉しか入れないのかな。


「橋本君、本殿をバックにツーショ撮っていい?」


小林さんは伏目がちに言う。ボクが頷くとツーショを何度も撮っていた。


写真が嫌いなわけではなかったらしい。


ボクと小林さんはそのまま千本鳥居に向かって歩いていく。ここでは小林さんは千本鳥居の中でボクとツーショの嵐。何もそんなに撮らなくてもってくらい。そんなことをしていると前方から見覚えのある集団がやってきた。


「あ、橋本君。もう時間だから帰るよ」


佐藤君がボクに言った。


もうそんな時間?


「小林さん帰ろう」


ボクがそう言うと小林さんは素直に駅に向かって歩き始めた。


 その日の夜、ボクがシャワーから出てくると、若林君が椅子に腰掛けていた。


「橋本、わりぃ。ちょっと話がある」


「何?」


「南のことなんだけど」


南さんのことか⋯⋯。

気が重い。


「お前、何かされていないか?」


はあ、やっぱりそれか。


ボクは黙って首を横に振る。


「そうか⋯⋯。俺はヤラれた。アイツ、中学の時は地元でヤンキーだったらしいぞ!」


知ってる。


「俺は警察に相談しているところだ。暴力で相手を思い通りにしようっておかしいだろ!」


そうだけど。


「ま、南のことはいいとして⋯⋯。お前、小林さんとはどうなんだ?」


「どうなんだって言われても⋯⋯」


若林君の言葉にボクは口ごもる。


「後夜祭の時に小林さんに告られたらしいじゃねえか。学校中で噂になってるぞ」


「学校中って大げさな⋯⋯」


「一年の女子の間じゃ、お前ら結婚してるってことになってるぞ」


若林君の言葉にボクは心の中で苦笑いをする。


「お前、ポプラ伝説って知ってるか?」


「ああ、ポプラ並木の前で女の子から告白されると恋が実るっていうやつだよね」


ボクの言葉に若林君は首を傾げる。


「多分、それ違うぞ」


えっ?


「後夜祭の時にポプラ並木の前で女から告白されると添い遂げられるっていうのがポプラ伝説だぞ。だから、お前ら結婚してることになってんだよ!」


若林君の言葉にボクは言葉を失った。

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