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君逝く朝に  作者: 杉山薫
第二章 小林さくら編
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第四話

 今年の文化祭は十月十八日と十九日の土日。決戦は日曜日。絶対、絶対、橋本君に接近してやる。私は恋愛未来日記を開く。


十月十八日 橋本龍之介君の演技は完璧、小林さくらは感極まって閉演後、橋本龍之介君に抱きついてしまう。

十月十九日 橋本龍之介君の演技は完璧、小林さくらは最終回の閉演後、橋本龍之介君に抱きついてしまう。


ふふふ、計画は完璧。

これ以上ないだろ!


 そして、文化祭当日を迎える。


さあ、初日の開演だ!


 文化祭の初日、私は台本の確認に精を出す。そもそも私は暗記というものが苦手だ。セリフを間違えたら橋本君に迷惑がかかる。それだけは避けなくてはいけない。午後二時、初演が始まった。


やってしまった⋯⋯。


私はセリフを言った瞬間、青ざめる。台本六ページ後ろのセリフを口走ってしまった。少し間をおいて橋本君は何事もなかったように演技を続ける。


カッコいい!


私もそれ以降は何事もなく演技を終えた。閉演後、私は感極まって泣き崩れてしまった。橋本君が私に駆け寄ってきた。


今だ!


私は恋愛未来日記に書いたように橋本君に思いっきり抱きついた。橋本君の胸に思いっきり顔を埋めた。


顔を橋本君の胸から離した瞬間、私は青ざめ自分の顔を両手で押さえて教室の外に駆け出していった。


私の涙と橋本君の汗で橋本君の衣装にべったりとギャルメイクがついていた。つまり、今の私の顔は⋯⋯。


メイク道具は教室にあるため私は家に戻ることにした。部屋にある予備のメイク道具でギャルメイクを装備していく。私にとってはギャルメイクは武装と同じだから。


「どうだった?」


貴子叔母さんが私に訊くが、私は黙って俯くだけだ。


「そうだ。さくらにいいことを教えてやろう。あの高校には文化祭で伝説があるんだよ。ポプラ伝説って言うんだけど聞く?」


貴子叔母さんがそう言うので私は黙って頷いた。


「後夜祭でポプラ並木の前で女子が告白すると恋が成就するっていう伝説なんだよ」


胡散臭い。

そんなんで恋が成就するんなら誰も苦労はしない。

まあ、恋愛未来日記を使っている私が言っても説得力がないが⋯⋯。


 私はそのまま学校に戻って橋本君を探す。クラスの誰に訊いても行方はわからない。何かあったのだろうか。後夜祭は明日の十七時からの一時間という情報もゲットした。

その日は何事もなく、いや正確に言うと何もなく帰宅した。店に出てしばらくすると橋本君が来た。


「お姉さん、ちょっといいですか?」


橋本君は私に文化祭のパンフレットを差し出した。


えっ?


「ボク、今回クラスの出し物の演劇で主役やってるんですよ。是非見に来てください」


橋本君はそう言うと真っ赤になって俯いた。


それぇ、絶対無理なんだけど⋯⋯。


「十時と十四時かぁ⋯⋯。ちょっと時間的に無理かな」


そりゃ、その舞台に出てるからね。


「ごめんなさい。無理言って」


「こちらこそ、ごめんね。頑張ってね」


気まずい⋯⋯。


 私は恋愛未来日記を目の前にして悶絶をしている。貴子叔母さんから聞いたポプラ伝説を利用しない手はない。

じゃあ、何を悩んでるのかって?

恋愛未来日記に書く文言だ。この恋愛未来日記は具体的に書き込まなければいけない。


告白って、何を告白すんの?

どのへんまで具体的に書き込む?


私は元来ヘタレだ。

もう国宝級って言ってもいいくらいに。

わからない。

もう告白内容は恋愛未来日記に任せよう。


十月十九日 後夜祭の時にポプラ並木の前で小林さくらは橋本龍之介君に告白する。


私は『。』に今まで以上にの想いを込める。


 翌日、二回の演劇は無事大盛況のまま終わった。最終回の閉演後の橋本君への抱きつきも含めてね。でも、顔はつけないように気をつけてたのでギャルメイクはそのままだった。あとは後夜祭での運命の告白。


ふふふ、楽しみ!

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