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君逝く朝に  作者: 杉山薫
第二章 小林さくら編
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第一話

 私は小林さくら。明日から高校二年生。私には苦い過去がある。それは小学生の時にイジメにより不登校になった過去、それを引きずって誰ともコミュニケーションを取れなかった中学三年間。高校進学にあたりお母さんの妹の貴子叔母さんに相談したら県外の高校で再スタートをきったほうがよいということになった。貴子叔母さんは元々ギャルなんだけど、私に高校デビューを勧めてきた。私の顔は元々薄い顔なのでギャルメイクには最適らしい。髪も黒髪から金髪にして、ギャルの仕草も貴子叔母さんから教わったおかげで、一年生の時はクラスで人気者になった。


私は元々陰キャなイジメられっ子なのに⋯⋯。


明日は二年生の始業式。少し、いやかなり不安だ。周囲の人が変われば私自身も変わってしまう。それが怖い。


 今日は始業式でクラス分け。クラスの名簿を見た瞬間、私は目を疑った。神様は居るんだ。橋本龍之介君、まさか彼と同じクラスになるなんて。


 橋本君とまったく絡まない日々が続いていく。クラスの人たちとは結構うまくいっていて、いわゆるスクールカーストの上位のような存在になれている。だけど、そんなことなんかどうでもいい。私にとってはそんなことよりも橋本君と仲良くなるほうが重要なのだ。


 ある日、南さんと一緒にランチをした時のこと。私は南さんに橋本君ともっと接近したいと相談した。南さんにじゃあそのうちと笑ってはぐらかされた。南さんは学年一位の優等生、私のような偽ギャルなんかじゃどうにもならない本物のスクールカースト上位者。はあ、気が滅入る。


 そんなある日。大手通信販売サイトのアマミョンで衝撃の商品を目にした。恋愛未来日記、訳ありのため一セット百円。どうせ百円だし、騙されても痛くも痒くもない。私は躊躇なくクリックした。


 三日後、恋愛未来日記が手元に届いた。日記帳が二冊。


だからセットなんだ。


取扱説明書の主な部分は次の通り。


十日以内の希望の未来を日記帳に日付指定で具体的に書き込む。


違法行為を書き込んだと認められた場合には、その日付の書き込みはすべて無効となる。


書き込む際、必ず最後に『。』を書き込む。その際、日記帳に叶ってほしいという強い念を送り込む。


どちらの日記帳を使用しても良いが、片方の日記帳は想い人に受け取らせること。受取前の記入はすべて無効となる。


想い人の日記帳の受取り後の廃棄等が確認された場合には、故意又は過失の有無にかかわらず、それ以降の恋愛未来日記への記入は無効となる。


ん、想い人に日記帳を受け取らせる?

そんなことできたら誰も苦労しない。

訳ありって、そういうことか。


 そんなこんながあり、もう一学期も終わり。橋本君に日記帳を渡さなきゃ⋯⋯。貴子叔母さんの家は家族経営の食堂をやっている。私も夜や休日には手伝いをしている。橋本君とはそこで出逢ったんだ。平日の夜は毎日のようにうちの店に来る。いつも同じ席で日替わり定食を頼む。最近、というよりも結構前から何も言わないというのが続いている。いわゆる常連さんというやつだ。私の顔は元々薄い。ギャルメイクを取ってしまうとまったくの別人になってしまう。橋本君は毎日のようにうちの店に来るが、私をクラスメイトとは認識していないらしい。


 一学期の終業式の日に私はある計画を実行することにした。二学期の始業式の前日に恋愛未来日記に記入するためにはどうしても橋本君に日記帳を渡す最終リミットだからだ。うちの高校の席替えは二学期の初日だけ。つまり、ここでやらなければ二年生のうちには橋本君に接近することはできない。学校に日記帳を持っていく。そもそも橋本君とは同じクラスという以外は接点がない。渡せないまま帰宅することになった。そして、メイクを落として店に出る。すでに橋本君は来店していて、いつもの席にカバンを置いたままトイレに行っていた。カバンのファスナーを開けっ放しで⋯⋯。私はこのチャンスを見逃さなかった。開けっ放しのカバンにあの日記帳を潜ませた。


やってしまった⋯⋯。

でも、どうする?

別に始業式まで待たなくてもよくね?

いやいや、こういうのは大事な時に使うんだ。

そうだ!

勇気がないだけなんだけど⋯⋯。


 明日は始業式。勝負の日。やってやる。駄目でもともとだ。日記帳を開く。


九月一日 クラスの席替えで小林さくらは橋本龍之介君の隣の席になる。


私は『。』のところで何度も何度も強くそれを願った。

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