1036800秒
起きると、夜が待ち遠しくなった。
私を待っている人がいる。
早く夜にならないかな。スマホの時間ばかり眺めていた。
「あの…もしかしたら、遅く、なるかもしれない」
母は訝しげにこちらをみる。
「ええと、同じくらいの女の子、と、話すようになって…」
「……」
「コンビニで、待ってるって」
「そう、いってらっしゃい」
あ、少しだけ口元が緩んだ。
早歩きでコンビニへ向かった。
昨日と同じくらいの時刻、コンビニの前には誰もいない。
少し早く来すぎたかもしれない。
カフェオレを飲みながらイートインコーナーでミィちゃんを待った。
しばらくして雨が降り始めた。
どうしよう、傘、持ってくるの忘れちゃった。
あ、ミィちゃんも傘を忘れて取りに戻ったのかもしれない。
30分、1時間、1時間20分…時計の針だけが先へ進む。
「あの…黒い髪の、昨日来てた、私くらいの…女の子、き、来ましたか?」
勇気を出して品出し中の店員さんに声をかけてみる。
「あー昨日の子ね、今日はきてないよ?雨も酷いし、もう帰ったら?」
「……」
「傘、買っていく?1本500円くらい」
「……いらない」
悲しみより、嘆きより、強く感じるのは激しい怒り。
この雨位に私を叩きつける、憎悪、嫌悪。
コンビニのドアが開くと勢いよく駆け出した。
エネルギーを放出するかのように吸って吐いて、吸って吐いて家まで走った。
昨日と同じように、門扉の前に傘を差した母がいた。
「…どうしたの」
「…」
「どうして…泣いてるの?」
母には雨で濡れた顔なのか、涙で濡れた顔なのかわかっているようだった。
「こなかった、待ってるっていってたのに、こなかった」
緊張とかどうでもいい。怒りを放出しきった今残るのは悲しみだけ。
「うれしかったのに、待ってるっていってくれてうれしかったのに」
とめどなく、言葉と涙があふれだす。頭の片隅の『嫌な私』の声がする。
だからね、ほら、ニンゲンなんて期待しちゃダメなんだよ。
貝殻になれ。城へ戻れ。おまえが好かれるわけないんだから。
それを打ち破ったのは、母の声だった。
「そんなのわからないじゃない。急な予定が入ったのかもしれないじゃない」
顔をあげると、昔と同じ母が立っていた。
「風邪をひいたのかも。たったの1度で、あなたはあきらめるの?」
促されるまま、お風呂に入って、着替えて、そこからのことはよく覚えていない。
翌朝、酷いのどの痛みと頭痛、倦怠感で目が覚めた。最悪の目覚めだった。




