ぬけがら.3
7月 日
初めて、この家に人がきた。
おばあちゃんは私のために人を入れたことが1度もなかったから変な感じ。
写真を撮ろうって約束した。嬉しいな。
今日で私はこの家を去ろうと思う。でも荷物を取りに来るのは後日。
お金さえあれば食べるのには困らない。
公園、図書館、コンビニ。どこにだって行ける。
おばあちゃんの死と引き換えに、私は自由になった。
7月 日
女の子が!女の子が可愛くなってた!やだ、頭悪そうな文章。
線香花火、楽しかったな。
『花火打つひとつひとつは皆いのち』
恥じることなんてない。きみがきみであるだけで、素晴らしい。
7月 日
『ミィちゃん』は無知なフリをした。通信制高校、うん、いいんじゃない?
きみなら大丈夫。こんなこと言ったら怒られそうだけど漂ってるもん、優等生オーラ。
私にできることは、つらい記憶を少しだけ上書きすることくらい。
どうかどうか、学校が怖いだけの場所になりませんように。
怖くなったら私とのぼった坂道を思い出して。
私と撮った写真を思い出して。
制服を貸してくれてありがとう。
7月 日
今日は初めて『テスト』をした。問題は簡単すぎた。
どんな反応するか試してみたくて、わざと1問間違えた。
女の子はためらうことなく丸をつけて100点満点をくれた。ああ優しい。
本当はね、私は中学生の範囲の勉強なんて当の昔に終わらせてるの。
時間は無限にあったし、本も勉学も大好き。そして賢い部類だよ。多分。多分ね。
7月 日
今日は荷物をとりに帰った。誰もいないことを確認しそっと家へ入る。
取り込めずにいた洗濯物を取り込んだ。洗剤の匂い。
これはおばあちゃんの匂いじゃない。
おばあちゃんを失ってはじめてあの部屋へ入った。
むせかえるほどのおばあちゃんの匂いと、私と暮らした足跡がある。
布団にくるまって、クンカクンカした。
さようなら。もうここは私の帰る家じゃない。
そして女の子と喧嘩した。涙が枯れ果てて今私の目は出目金のように膨張している。
傷つけた。ごめんね。
7月 日
今日は一緒にケーキを食べた。美味しすぎてはんぶんこねって言われたのに半分以上食べた。
幸せだと感じることを許してください。なんて、いったい誰に、許しを請うのか。
胸の中がいっぱいで何も書けない。




