表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひと夏の透明  作者: ここやまいぬこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

86400秒

14日目がきた。今日はミィちゃんがいなくなる日。


最近、母と食卓を囲む日が増えてきた。毎日じゃないけど、時々。

何も話さない日もあれば、当たり障りのないどうでもいい話をするときもある。

いつかミィちゃんを紹介できる日がくるといいな。

成人して、社会人になって、近くの駅で待ち合わせをして、

「あの頃、娘さんと仲良くさせていただいてました女の子です」って。

「彼氏でも紹介されるのかと思ったわ」と笑う母。


今日は夜まで長かった。永遠に来ないかと思えるほど長かった。


靴を履いて、コンビニへ向かう。

足取りが重い。


写真の現像はうまくいったかな。鼻の穴のアップやピンボケ写真もあったりして…。

ミィちゃんは笑っているだろうか。それとも泣きじゃくっているんだろうか。


いつものイートインコーナーにいた。おにぎりを頬張っている。


「いっつもそのおにぎり食べてるね」

「このおにぎりはね、おばあちゃんがお出かけするときに置いてってくれたおにぎりなの」


「写真…」

「あ!!!!!」

かぶせるようにミィちゃんが叫んだ。


「ごめん、写真忘れた」

「え?」

「どうしよう!明日持ってくる」

「明日?」

「明日…。あ」

「…明日、も会える?」

「…」

ミィちゃんは寂しそうに微笑むだけだった。


「ほんとーは全部失敗してて、現像1枚もできなかったんじゃない?」

「……せいかーい」


嘘か本当かわからない。今はただ、この時間を大切にしよう。


悲しくなるから、楽しい話だけをした。

将来の夢、やってみたいこと、行ってみたい場所。

口から「これから全部一緒にすればいいよ」って言葉が出そうになる。

それを強制的に意識的に飲み込んだ。


23:50


シンデレラなら、そろそろ魔法の効果が切れるころだ。

もしかしてミィちゃんも魔法がとけて蝉に変わったりしない?

そうしたらびっくりして逃げ出しちゃうかも。


「そろそろ、帰ろうか」


ミィちゃんが静かな声で切り出した。


「握手、してもいい?」

「うん」

右手を差し出す。

ミィちゃんの手は暖かい。


コンビニを出て、家への道へ戻る。


後ろからミィちゃんが追いかけてきて、私を抱きしめた。

背中が濡れる。これは涙か、それとも汗か。

なにも言わなかった。何も言えなかった。でも十分だった。

言葉にしない方が伝わる感情も、きっと存在するから。


ゆっくり帰った。

思い出を辿るように。


遠くで、けたたましいサイレンの音がする。

それから、蝉の鳴き声も。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ