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【残り時間:0分00秒】

【残り時間:0分00秒】


 魔王ルシフィエラが魔力の流れを遮断し、滅びの術式は完全に停止した。


 世界は――救われた。


【残り時間:0分00秒】

【世界滅亡:中止】

【勇者の筋肉:限界】


「ぐぅっ……腕……上がらねぇ……筋肉が、しにそう……!」


「ユウトさん、無理しないで! いま回復魔法を……!」


「もう回復でどうこうなる段階、超えてる気がする……」


 地面に座り込んでいた俺の身体は、もはや全身が鉛のように重かった。

 筋肉痛と骨折と火傷と魔力枯渇が一気に押し寄せてきて、呼吸するのもやっとだ。


 魔王ルシフィエラは、俺たちに静かに近づき、そして――


「……ありがとう。勇者、荒神ユウト。あなたのおかげで、私は“滅び”の呪縛から解き放たれた」


「こっちは……もう、眠ってもいいですか……」


「ダメです」


 リリィの冷静なツッコミが飛んでくる。


「だってまだ、女神が黒幕ですから!!」



 ◆ ◆ ◆



 空が裂けた。


 眩い光と共に、例の女神が、満面の笑みで降臨した。


「おつかれさまでした~! いや~間に合いましたね、勇者くん! いやほんと、あと5秒遅れてたら、世界終わってましたよ! ギリギリセーフ!」


「……おい、貴様」


「あれ? どうかしましたか?」


「てめぇ……最初っから、世界を滅ぼす気だったな……?」


「えぇまぁ? だって腐った世界なんて一回壊して、新しくすればよくないですか? エコですよ、エコ。持続可能な転生社会ってやつです☆」


「…………」


 ユウトは、立ち上がった。


 満身創痍、骨のきしむ音が聞こえるほどの限界状態。それでも、拳を握りしめた。


「おい女神。お前の理屈、全部まとめて、粉砕してやるよ」


「え、なになに? もう終わったんじゃ――」



 ――ド ゴ ッ !!



「ごぶえええぇぇぇっ!!!???」


 ユウトの拳が、女神のど真ん中に炸裂した。


 宙に吹き飛んだ女神は、ふわふわと旋回して地面に墜落。もんどり打ってそのまま頭を地面にゴンッ。


「……お痛が過ぎたな、天界のポンコツ」


「うっ……ご、ごめんなさいぃぃいいいぃぃぃぃぃぃぃ……!」


 まさかの――女神、土下座。


「うぅぅ……あのですね……そもそも、地上の人類があまりに我儘だったので……女神会議で再起動を提案したら、ノリで決まっちゃって……」


「ノリで世界滅ぼすなあああああああああああ!!!」


「ひいぃぃぃ……! もうしません! 土下座します! 神だけど土下座しますからああああ!!」


 そして女神は、泣きながら滅びの術式を完全消去。魔王ルシフィエラの呪いも解き放たれ、

 世界は、ついに、本当に――救われた。



 ◆ ◆ ◆



 数日後――


 ユウトは、城塞都市ディアボロスの中央広場で寝転がっていた。

 空は青く、風は爽やかで、隣にはリリィが座っている。


「ねえユウトさん……本当に、終わったんですね」


「……ああ。終わった。世界も救った。筋肉も治った。女神は土下座した。俺、がんばった」


「ふふ、がんばりましたね。えらいです」


「褒められた……癒される……でももう冒険は勘弁……」


 リリィが微笑む。


「じゃあ、ゆっくり休みましょう。今だけは、何も考えずにーー」


「……うん」




 ーーだがその瞬間、空が揺れた。




「……ユウトさん。空、見てください」


「んあ?」


 空に、巨大な緑の根が現れていた。

 雲を割り、天を貫き、世界樹の枝のひとつが――暴走を始めている。


「いやいやいやいやいや!?」


 女神の声がどこからともなく響く。


『ご、ごめんなさい! 世界樹の根っこに変なバグが入っててぇ……で、で、でーた削除できなくてぇぇ!! あっ、やばいです!! あと1時間で、世界が破滅しそうです! 急いでくださ――』


「ちょっとォォォォオオオオオオオオオ!?!?」


 リリィが慣れた動きで爆弾をリュックに詰め込む。


「出番ですね、ユウトさん!」


「いや待って! 俺の筋肉はまだ休暇中!!」



【新たなタイムリミット:残り60分】


 “第二の1時間”が、今また始まる――!?



 ――To be continued…?


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