表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

【残り時間:60分00秒】

【残り時間:60分00秒】


 目が覚めたとき、そこは――真っ白だった。


 白すぎて落ち着かない。しかも、視界のど真ん中に何やら光ってる女神(仮)みたいなのが浮いている。


「……あれ? 俺、たしか……」


「トラックに轢かれて死にました♡」


「なんて?」


 俺の名前は荒神ユウト。現代日本の高校二年生。普通に部活して、普通にラーメン食って、普通に帰宅中、青信号を渡ってたら右折車に轢かれた。


 で、目が覚めたらこの空間だ。


「えー、では説明しまーす! あなたはですね、地球での人生を終了しまして、ただいま異世界に転生することが決定いたしました!」


「異世界!? あ、ありがちだけど……まぁいいや。で? 俺、チートもらえる感じ?」


「いえ、時間です♡」


「は?」


「異世界はですねー、ただいま世界滅亡まで残り60分でして~」


「え、何それ!? 俺、詐欺られてない!? 転生ガチャ大外れじゃない!? せめて一週間くらいくれよ!」


「わがまま言わないの。ちゃんと“最後の希望”スキルはついてますから。がんばって魔王倒してきてください♡ では、いってらっしゃ~い」


「ちょっと、ま、待っ――!」



 ◆ ◆ ◆



「…………はっ!」


 ガバッと起き上がった俺の目に映ったのは、青空。そして森。そしていきなり火の玉が飛んできた。


「ちょ、えっ!? おま、ええええええええええええええっ!?」


 反射で横っ飛び。間一髪で火の玉を回避。地面に転がった俺の耳に、けたたましい悲鳴が届いた。


「誰か! 誰か勇者様はいませんかーっ!!」


 見ると、少し先の村で、煙が上がっていた。巨大なトカゲみたいな魔物が暴れてる。なんかファンタジーっていうより、災害。


「……よし、落ち着けユウト。まず現状を確認しよう」


 ・ここは異世界。

 ・世界滅亡まであと60分。

 ・スキルは『最後の希望』ってやつ。

 ・使い方は「死にそうになると発動」らしい。

 ・武器、防具、なし!

 ・情報収集、なし!

 ・時間、ない!


「いやムリじゃね!?」


 でも――


(……あの村、見捨てるのは……ないな)


 まったくもう、性格が“勇者体質”なのが損だ。


「――行くしかねぇ!!」


 走った。村まで全力疾走。足元の地面が爆発しても、火の粉が髪に引火しても、止まれなかった。


「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 地面を蹴り上げ、民家の屋根を飛び越え、火球を手で弾いて(痛い)、荒神ユウト、爆誕から3分で初戦闘!


「おいトカゲぇぇええ!! こっちは死にたくねぇんだよぉおおおお!!」


 素手で殴った。どうかしてる。でも殴った。というかもう、逃げられないし!


 トカゲの一撃がユウトの脇腹をかすめ――その瞬間、世界が反転した。


 ――スキル【最後の希望】発動。

 ――条件:「瀕死状態で自動発動」

 ――効果:「あらゆるステータスを10秒間100倍」

 ――副作用:「10秒後、確実にバテる」


「ッッッッッしゃあああああああああああ!!!!」


 ユウトの拳が、トカゲの頭蓋を粉砕した。



 ◆ ◆ ◆



「えっ、なに、誰この人……」


「もしかして、勇者様……?」


「なぜ素手で勝てた……?」


 村人たちは呆然と立ち尽くし、その中心で俺は、全身ガクガクに震えながら地面に座っていた。


「やっべぇ……立てねぇ……」


 体中がバキバキに痛い。10秒だけ最強になったツケがきっつい。


 だがそのとき。


「あなたが……助けてくださったんですね……!」


 ふらりと近づいてきた少女。金髪ポニテにローブ姿。やけに透明感のある顔立ちで、村娘というより魔法使いっぽい雰囲気だ。


「ありがとうございます……! わたし、リリィ・アストレアと申します!」


 ぺこりと頭を下げた彼女の目に、妙な光が宿っていた。


「わたし、あなたと一緒に魔王を倒します! 世界を救う旅に、ぜひ同行させてください!」


「え、いきなり!? 俺まだレベル1だぞ!?」


「大丈夫です。わたし、実は王国の宮廷魔導士ですから」


「そっちもスゴいな!?」


 こうして俺は――


 残り52分で、最初の仲間を得た。


 ……待って? あと52分しかないの!?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ