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俺と君の失恋話。

作者: 紫八汐

 「すーはー……」


 深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。俺は決めた。今更それを変えたら多分このまま生き地獄のような日々が続く。

 覚悟を決めて俺はメッセージを送った。


『あのさ』既読

『ん?』


 少し経って返信が来る。正直不安で、心配で、怖くて、そんな感情が入り交じったこの分からない気持ちを制御するのに少し時間がかかった。


『俺たち別れないか?』既読

『、え?ほかに好きな人ができた?』


 そんなわけない。そんなわけないだろ。君がいるのに俺が他の人に目移りするなんて絶対ありえない。絶対ありえないのに。

(一番先に思いつく理由がそれなんだな)


『ちがう』既読


 既読がついてから2分ほどたった。多分あっちは困惑してるだろう。

 そしてこのメッセージの返信の最適解を導こうとしてる。でも、多分君は俺が思ってる事を言うんだと思う。


『別れたいならそれでいいよ、』


 ……ほらな。優しい君はいつも人の気持ちを尊重して、自分の気持ちを押し殺して、いつも隠れたところで一人で悲しんでる。もっと人を頼れって、昔からいってるのになぁ……。

 そんな君を一番近いところで、一番理解してる俺が支えることができなくなってごめん。


『うん、じゃあ別れよっか』既読

『ごめんな』既読

『自分勝手で』既読


 自分勝手で本当にごめん。


『いいよ』


 本当は良いわけないのに、いいよなんて言わせてごめん。


『ありがとう。』既読

『大好きだったよ』既読


 最後に嘘ついてごめん。"だったよ"なんて嘘。今でも好きだよ。大好きだよ。


『私も大好きだったよ』


 こんな振り方したのに、こんなに君を傷つけてるのに。最後にに大好きだったよってなんて言わせてごめん。

 そしてありがとう。

 こんな俺に楽しい2ヶ月をくれて。こんな俺に君を好きだと言える権利をくれて。こんな俺に、こんな最低な俺に、好きだよって言ってくれて。

 さようなら、俺の愛しい人。次は君が心から愛して、君のことを心から愛してくれる誰かと幸せになってくれよ。

 でも、俺よりも君を好きな人なんてこの世で10人と居ないと思うぜ。

 そんなバカなことを考えて気を紛らわそうと思ったが無理だったらしく、気付けば俺の頬を伝う生暖かい液体が目から流れてた。

 拭いても拭いても止まらなくて、悪化するばかりで、これが一番良かったはずなのに一番最悪なものに思えてきて、本当は間違ってたのかな、なんて考え出して。

 バカだな、本当。

 そこからは泣いて泣いて泣いて泣き疲れて寝て。きずいたら21:00だった。

 スマホを確認すると君から不在着信が2件はいってる。


『どうした?』既読

『ごめんこんな遅くに。通話できる?』


 正直通話することは避けたかった。君の声を聞いたらまた泣きそうで。

 いつもは通話するときワクワクしてたはずなのに今はわけわかんない感情に襲われてるなんて、変だと思わないか?


『思いはちゃんと言葉で伝えたくて。』

『無理なら明日でも大丈夫!』


 ここで無理なんて言ったら君は落ち込むんだろうな。それなのに大丈夫なんて言って。

 だいじょばないくせに。


『今少し風邪気味で声出せないから聞くだけでもいいならいけるよ。』既読

『それで全然おっけー』

 風引いてるなんて嘘。本当は泣きすぎて鼻声だから。俺が君を振ったのに俺がなくなんて許されないことだから。

 ブー。ブー。

 すぐにとらなきゃいけないけど指が動かない。俺が迷ってるこの時間も君は緊張してるのに。

 何とか指を動かして通話に応答する。


「もしもし?」


 久しぶりに聞いた君の声はいつもより少し枯れていた。

 これは俺が一番好きな声だ。この声を聞くといつも安心して、明日も頑張れる気がした。

 でも今は君の声を聞くだけ胸が苦しいよ。一番好きな声のはずなのに。おかしいよな。 


「あのね、私は自分の好きって気持ちを人に伝えるのが苦手なの。友達とかには君の好きなところとか普通に言えるのに君自身に言えないなんて、度胸ないよね。私」


 なんだそれ。聞いてないぞ、友達に俺の好きなとこ言ってたとか。こないだ俺のダチに俺のこと友達として好きなのかもとか言ってたのに。


「そのせいで君に寂しい思いをさせて……不安にさせて……本当にごめん、」


 俺のせいで泣かないでくれ。謝らないでくれ。


「こんなこと言われても困ると思うけどさ、君に別れを告げられたとき頭が真っ白になって、泣いちゃった。」


 君の涙は俺が流して良いもんじゃないのにな。

 ごめんな。


「これから好きな人に好きってちゃんと言えるように、これを克服したいと思う。だからその手伝いを君にしてほしい」


 やめてくれ。それ以上は言わないでくれ。


「もう1回私と付き合ってください」

「……確かに俺はまだ君のことをが好きだ」


 声は出さないとか言ったけど声を出さずになんかいられなかった。


「でも復縁するかどうかは少し考えさせてほしい」


 多分このまま復縁しても今までみたいに純真な気持ちで大好きだよって言えなくなる。

 そんなのつらいだけだ。またこのつらさを味わうくらいなら復縁しないほうが良い。


「っ……。うんっ……わかっ、た。でも、もしっ復縁しないって、なった時でも……、今までみたいに通話してくれるっ……?」

「あぁ。もちろんするよ」


 ごめんな。また泣かせて。ごめんな。また噓をついて。


「それきいたらっ、少し楽になった……。この関係が壊れることがっ……本当にっ怖かったから」


 君がいうこの関係っていうのは幼馴染としての楽な関係?それとも付き合ってた彼氏彼女としての相手を思いながらの楽しい関係?

 多分どっちもなんだろうね。


「ごめんね……こんな遅くにかけて。」

「あぁ」

「明日は予定があるんだよねー。絶対目が腫れてるよ……。」

「もし腫れてたら温かい濡れタオルを目の上に置いておくと目の腫れが結構引くぞ」

「さすが女子力高い系男子」

「うっせ」

「ふふっ、おやすみ!大好きだよ」

「あぁ、おやすみ。……俺もだよ」


 最後は言おうかどうか正直迷った。大好きだったよにしようかとも思った。でもそれじゃ君は傷つくだろうな。

 俺は復縁するつもりはない。多分復縁すると、迷うだろうな。君に好きだと言うとき。

 好きな気持ちは絶対に変わらない。だけど好きだって言うたびに心が締め付けられる感覚に陥ると思う。そんなの苦しいじゃんか。

 それに多分もう君が思うような昔の関係には戻れない。幼馴染としての楽な関係も、彼氏彼女としての楽しい関係も。

 だから、ごめん。明日は君にまた涙を流させるかもしれない。悲しい思いをさせるかもしれない。

 でも、どうか許してほしい。俺を恨んでもいいから。嫌いになってもいいから。


 そして後日俺は君に別れを告げた。

 君は思った通り泣いていて、僕は思った通り胸が締め付けられて。

 そして最後の最後に君は言った。


「_____」


 ……本当は俺が言うつもりだったのに先を越されてしまった。こちらこそ、










 ありがとう。

こうして君と僕の失恋劇は幕を閉じた。君から得たものは大きかったし、君がくれた幸せな時間も楽しかったよ。

 本当にありかとう。

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