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ミズキはしばらく動かなかった。
「ホダカさん」
「違うんです。これは」
「失望しました。よりにもよってこの少女を匿ってるだなんて」
ミズキは氷のような眼差しでホダカを見た。
違う。違うんだ。これは、そういうつもりじゃ。
「とてもいい人だと思っていたのに、残念です」
「違うんですミズキさん」
「じゃあこれでどう釈明するんですか」
ミズキはピコを指差して言った。
「あ……」
「けど、彼女は釈放された身ですから僕がどうこうすることはできません」
「なら……」
「ただ! 僕は彼女が憎い。僕の故郷で騒ぎを起こして、のこのこと釈放されて……。しかも下層の人間だ! はっきり言って迷惑です」
ミズキはピコを強く憎むように睨んだ。
「これ、置いときますので。それじゃあ」
クッキーの入った包みを置くと、ミズキは乱暴にドアを開け、出ていってしまった。
せっかく、仲良くなれると思っていたのに……。これじゃ前と何も変わってないじゃないか。
「ホダカ……」
ピコが遠慮がちに顔を覗かせた。
「出てくよ」
「……」
「宿なんて探せばあるし、なければ公園にでも泊まればいい」
「いやでも……」
「それにこの夢は私一人の問題だ。所詮お前には他人事だ。だからお前を巻き込む必要はなかった。ごめん」
「いやいいんだ」
「じゃあ帰る。多分お前に会うこともないだろう」
「ピコ……」
「迷惑かけてごめん。じゃあ」
ピコはそう言うと出ていき、部屋にはいつも通りホダカ一人になった。しかし、今は普段とは違う別の空気がそこにあった。
なぜだか、大事なものを失ってしまったかのような孤独感が彼に押し寄せていた。
まだあいつらとは出会ったばっかなのに……。どうしてこんなに悲しい気持ちになるんだ。
ホダカ自身にも分からない、突如彼に湧いた気持ちに飲み込まれそうになりつつも、一方で冷静に自分の心情を整理しようとしていた。そして彼は、ひとつ思い当たることに気づいたのだった。