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5

何だったんだろうか。あれは。

 

 ホダカは自室のベッドに横たわりながら自問した。例の少女ピコに対する自分の感情について、未だに理解ができていなかったのだった。

 別に好きだとかそういうわけじゃない。けれどなぜだか彼女に惹かれるのだ。

 いくら思案しても納得のいく答えは出てこなかった。ホダカにとってこんなことは初めてだった。

 ホダカが頭を抱えて唸っていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。廊下を通り、扉を開けるとそこに立っていたのはピコだった。

 ホダカは息を呑んだ。

「な、何をしにきたんだ」

「しばらく住まわせてくれ」

「は?」

 何を言っているのだ。この少女は。

「もし払うべきなら金はある。どうせ上層に向かったら必要なくなる。だから居候させてくれと言っている」

 確かに上層と中下層では通貨が違うが。そういう問題ではないのではないか。

「だ、だがもしバレでもしたらまずいんじゃないか」

「別に大丈夫だ。私はもう釈放された身だし、お前に迷惑をかけることもない」

 そう言うと、ピコはさも当たり前のように眼中に無いかのようにズカズカと部屋の中に入ってきた。

「おい、待て。おい」

「だから数日でいなくなればいい話だろう。二、三日でいい。すぐに上の階に向かうから問題はない」

「結局お前は塔の外を目指してるのか」

「ああ」

「じゃあ密告でもされたらまずいじゃないか。匿ってた俺も捕まる」

「所詮思想の問題と言ったのはお前じゃないか。それに一度や二度捕まったくらいで夢を捨てるのはバカだ。どうせならやり切りたい」

 ピコからはただならぬ自信が放たれていた。周りの者を吸い込んでしまうくらいに強烈だった。ホダカはそれ以上何を言えばいいか分からず、黙ってしまった。

「ああもう分かった。いいか。三日だぞ。三日経ったら出ていってもらう。いいな」

「ありがとう。助かる」

 感謝だとかすべきことはちゃんとするものだから、余計やりにくい。ホダカは思った。

「けど俺の部屋結構狭いぞ」

 ホダカの暮らす集合住宅の一部屋はいわゆる1LDKで、二人も暮らせるのかどうかは分からない。

「適当にリビングあたりで寝る」

「そうか。でもなんでホテルとかに泊まらなかったんだ。観光地なんてないが、寝泊まりだけの宿なんて探せばあるだろう」

「もちろん探した。けど、どこも下層の住人はダメだって」

「あ……」

 下層の住人に対する風当たりは決していいとは言えない。三層に分かれている塔の性質上、そうなっているのは仕方がないのだが、多くの人が下層に対して良い感情を抱いていないのが事実だ。

「別にいいんだ。これは昔からそうだったし、下層でもそう教えられてきた。もう慣れている」

 ピコは顔色を一切変えずに言った

 彼女は強いのだ、自分とは違って。嫌なことから逃げずにその上で自分の気持ちに正直に生きている。

 ああ、羨ましい。

「そうか」

 その時、腹の虫が鳴る音がした。どうやらピコのものらしい。

「ごめん。何か食べるものが欲しい」

「ああ、そうだな」

 ホダカが冷凍食品を取り出そうとした時、扉を激しくノックする音が響いた。

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