表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

プロローグ

 壁にシミが入った建物がひしめく、決して綺麗とは言えない路地に一人の老婆が座っていた。彼女の周りに輪を作るように何人かの子供達も座っている。

「ねえねえ。セン婆! あの話、もっかい聞かせてよ!」

 セン婆と呼ばれたその老婆は少女の無邪気な瞳に見つめられ、やや仕方なさそうに微笑んだ。

「しょうがないねぇ。じゃあ話すとしようかのぉ」

 周りの子供達は今か今かと、目をキラキラさせながら話の続きを待っている。

「栄華を極めた人々は、やがて大きな夢を見るようになった。自分たちならこの惑星なんてものから出て、もっと広い場所へと出ていけるんじゃないかと。確かに昔の人々は自分たちの住んでいる星を出て、新天地を知った」

 老婆は一言ずつゆっくりと、諭すように語る。

「じゃが、愚かにも己の私利私欲のために欲張ろうとする者が現れた。そして人々は醜い争いを始めた。大地は荒れ、草木は枯れ、残ったのは生き物の死骸と争いの跡だけじゃった……」

 子供達は固唾を飲んだ。もう何度も聞いてきた話だ。どこが山場なのか、頭に入っている。

「神は怒った。それはもう、どうしようもない怒りじゃった。神はまず、禍根の残る大地を綺麗さっぱり洗い流してしまった。次に争いを起こした者どもを全て呪い殺してしまった。ある者は倒れ、ある者は刺された。そしてほんの僅かな、許された人々のみが遺された」

 話を聞く子供達の中には、恐れの表情を浮かべる子もいれば、どこか憧れるような表情の子もいる。老婆は語気に力を込めながら話を続けた。

「遺された人々はただの荒野と化した大地を捨て、持っていた技術を全て結集して神の怒りを鎮めるための塔を建てた。そしてそこに暮らし、二度と神を怒らせぬように慎ましく生きるようにした。その人々の子孫で、その塔に暮らしているのが我々というわけじゃ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ