愛すべきと刻まれた何かを忘れて遠く
愛すべきと刻まれた何かを忘れて遠く
酔って件のごとし
戯れて詩す やさぐれて死す
愛すべきと刻まれた国を忘れて遠く
虎死して皮を残すとは
狩人の首尾の自慢なり
功罪を後に問うわけは
果ては史家の口糊なり
愛すべきと刻まれた家を忘れて遠く
我が身の何を残せるや
問わるる傷も益も薄々
小言戯れ言の類いとや
刻む墓碑の落影も寒々
愛すべきと刻まれた人を忘れて遠く
さりとて今も刻む一言
活計の立つ技でもなく
問うべき情の届かぬと
恨みを向ける誰もなく
愛すべきと刻まれた己を忘れて遠く
故にただただ生きるのみ
なおやみくもに走るのみ
愛すべきと刻まれた何かを忘れて遠く