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4年振りにみたそのダンジョンは、全く姿を変えることなく存在していた。
「じゃあ、最終確認をしよう。俺が後衛で、カレンが前衛。これでいいよな?」
「ええ、大丈夫です。頑張りましょう。」
そう言ってカレンはダンジョンの中へ進んでいった。
俺も緊張しながら足を踏み入れると、カレンを追って行った。
ダンジョンの1層には、前に来た時と変わらず草原が広がっていた。
「ここが、ダンジョンなんですね。」
カレンはそう感慨深く呟いた。
「このダンジョンの一層は、ビックボアやキラーラビットといった、F級の魔物しか出ない。それでも何が起こるかわからないから気をつけよう。」
しばらくダンジョンを進んでいると少数のビックボアの群れを発見した。
「よし、初戦闘だ。カレン、デコイを使って敵の注意を引いてくれ。」
「わかりました。デコイ」
俺はそれを聞くと、近くの草むらに潜伏を使って隠れた。
(後は、俺が一体ずつ倒していこう)
彼女のデコイは凄く、複数相手でもこちらに全く注意が向かなかった。
俺はものすごい快適にビックボアを倒すことができた。
(カレンも一撃でビックボアを粉砕してる、すごいパワーだな。なにはともあれこの調子なら一層は余裕かな)
そう考え、潜伏を解いてカレンに労いの言葉をかけようしたとき。
「ビックボア、10頭また来ます。」
「え!」
慌てて俺はカレンの方向を見ると、さっきより興奮したビックボアが10頭、こちらに向かっていた。
再び俺とカレンで1体ずつ倒していった。
(言われていた通り、カレンのデコイは強力だな。あんなにすぐ、敵が来るなんて。)
そんなことを考えているとまた。
「今度はビックボア15体です。」
(ええー)
その後も次々と止まることなく出てくる魔物と戦闘して半刻後、俺たちはダンジョンの外にいた。
「はあ、はあ。なんだあの敵の量は。」
「すみません。やっぱりデコイが制御してきれなくて……」
「俺こそ、カレンのデコイの強力さを甘く考えていた。
しかし、あの量の敵と当たると流石に物資が足りなくなる。」
あの後も次から次へと敵が来て、そのせいでに 矢をたくさん使ったため、大量に買っていた俺の矢はすっかりなくなっていた。
こうしてパーティーでの初めてのダンジョン挑戦は失敗した。