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「はぁ、はぁ、はあー。何をやってるんだ俺は。」
ひたすら移動した疲れにより頭は冷静になっきていた。
「ここは、郊外の森か。なんだってこんなとこまで。ほんとに俺はどうかしてるな。」
軽い自虐を織り交ぜつつ、頭を冷やしつつ帰ろうと思ったそのとき。
「ブォォォォ」
と言う唸り声の後にドゴーンという大地を割るような音がした。
「なんだこの音。そういやベックは、最近郊外の森は魔物が活発だから気をつけてろって言ってたな。」
このときの俺はまだ完全に頭を冷やし切れてはいなかった。
そのせいか明らかに危険な音の中心へと向かって行った。
音の中心には、俺と同じくらいの女の子がDランクの魔物であるオーガと戦っていた。
「くっ。やっぱり強い。私はこんなところで負けられないのに。」
オーガと女の子の戦いは明らかにオーガが押していた。
オーガを見て冷静になった俺は。
「あんなのに敵うわけがない、逃げないと。」
と呟いて逃げ出そうとした。
その瞬間
『君という存在が彼女の足を引っ張ってる。』
『彼女の欠点はこんな雑魚との約束を果たそうとしてるとこだね。』
といった。さっきの酒場での苦い記憶がフラッシュバックした。
(なんで今、こんなこと思い出すんだ。
……でもあいつの言う通り、本当に俺が彼女の足を引っ張っているなら、俺が彼女に追いつかなきゃならない。
ならこんなところで、怖いからって逃げ出してなんかいられない。)
「俺は彼女との約束を果たすんだ。」
そう呟き、覚悟を決めて、オーガを倒すため草むらに潜んだ。
「潜伏」
アランの姿が草むらの中で消えた。
俺は初めてのDランクの魔物を前にしても落ち着いて考えた。
(あのオーガは今、女の子にしか注意が向いてないため、こっちに気付いてない。
あのレベルの魔物は、いつもみたいに頭に当てても、この弓矢の威力では怯まないし、その後は必ず見つかって終わりだ。
なら1発で仕留めれる弱点を探すしかない。
もっと深く、いつもより集中して見るんだ。
全神経を見ることに費やすんだ。)
そうして鍛錬を初めてからの10年間一番集中してオーガを見た。
そのとき、いきなりオーガの首筋が光って見えた。
(なんだ、獲物が光るなんてことは今まで一度もなかった。このままやっても突破口はない。一か八かあの光にかけてみよう。)
「絶対に当てる」
そう呟いて全身全霊で弓を引き絞り、矢を放った。
放たれた矢は綺麗にオーガの光っているところに当たった。
次の瞬間、
「グッ、グウォォォォ」
苦しみながらオーガは倒れて消滅し、魔石だけが残った。
「倒せた……俺がオーガを倒せたんだ。」
俺はオーガを倒せた喜びを噛み締めていたが、すぐにさっき見た光が気になった。
(さっきの光はなんだったんだ。
あの光のところに矢を当てたら本当にオーガを一撃で倒せたし、あんなのは見たことも聞いたことないぞ。
なんか手がかりは……そうだステータスを確認してみよう。)
そう思うや否や、自分のステータスを確認できる冒険者カードを取り出して、ステータスを確認してみた。
(うわ、能力値が大幅に上がっている、オーガを倒した影響かな。
ん、なんだこれ?)
スキルは1人一つはずだが、そのステータスカードには潜伏と言うスキルの他に、新しく「暗殺」というスキルが追加されていた。