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「なんでこんなところに……」

 サラを見つけた俺は、しばらく呆けていたが、すぐに持ち直すと。

 こんな姿を見られたくないという思いからこっそり立ち去ることに決めた。

 そして人混みに紛れて立ち去ろうとしたそのとき。

「あー!アランじゃん。4年ぶりね。」

 逃げる事は叶わず、幼馴染にみつかってしまうのだった。

 正直今すぐにも「人違いです。」と言って逃げ出したかったが、そうすると余計面倒くさいことになりそうな気がしたので、諦めて答えた。

「久しぶり。まさかもうダンジョンマスターになるとは思わなかったよ。」

「ラストダンジョンを攻略するのよ。私はこんなところで止まってられないわ。」

 久しぶりに会ったサラは昔と変わらずこちらが目を背けたくなるほど眩しかった。

「そんなことより。アラン、あなたは何をしてたの?全然噂を聞かないから心配してたのよ。」

 噂なんか聞くはずない。だって俺は何も成し遂げてない、ただのF級冒険者なんだから。

 ただ、そんなことをサラに言うのは惨めで恥ずかしくなるから言いたくなかった。

「いやー……」

 などと言って誤魔化していると。

「サラさん。盛り上がっているとこ悪いが、今からこのギルド長に挨拶に行くんだろ。」

 1人の暁月のメンバーが助け船を出してくれた。

「あら、そうだった。悪いわねアラン。しばらくここで攻略するから、また会いましょう。」

 そう言うとサラは、ギルド長の部屋に向かっていった。

 嵐のように去って行った幼馴染を見て感傷に浸っていたとき。

「お前がサラさんの言っていたアランという人か。」

 さっき助けてくれた暁月のメンバーに言われた。

 その暁月のメンバーの威圧感に押され俺は

「はい、そうです。」

 としか言えなかった。

「すまない。名前を言ってなかったな。私の名前はハイド・シュレイガーと言う。暁月の副隊長だ。君のことはサラさんからよく聞いてるよ。」

「はあ、サラは俺のことをなんて言っていましたか?」

「彼女は君をとても評価していて、君と一緒にラストダンジョンを攻略すると、ことある事に言っているよ。」

「はあ、そうですか。」

 サラが何故、そこまで俺のことを評価してるのかはわからないが、褒められ慣れていない俺は、曖昧な反応を返すことしかできなかった。

「そんな君にお願いしたい。」

「なんでしょうか?」

「冒険者を引退して田舎にでも引っ込んどいてくれないか?」

 いきなり言われたその言葉がすぐには飲み込めず思わず固まってしまった。

「なんで、そんなことを?」

「わからないなら教えてあげよう。君という存在が彼女の足を引っ張っているからだよ。彼女が何故すぐにラストダンジョンを攻略しないと思う?」

「4大ダンジョン攻略が大事だからじゃないのか?」

「違うよ。君が追いつくのを待つために、わざわざ全部の4大ダンジョンを攻略しようとしてるんだ。つまり君のせいで彼女は、足止めをくらっているのさ。」

「そんな……」

 口ではそんなことを言いながら、彼女の行動を否定できない自分がいた。

「気になって君を調べて見れば、冒険者になってから一度もダンジョン攻略をしてないF級冒険者。なんで彼女はこんなのに期待しているのか本当にわからない。彼女の唯一の欠点は、こんな雑魚と交わした約束を、未だにはたそうとしているところだね。」

 その言葉を聞いた瞬間、俺は一気に頭にきた。しかしハイドに圧力をかけられ何も言い返せなかった、俺は思わず逃げ出してしまった。

 (悔しい。)

 (悔しい。)

 (悔しい。)

 (何も言い返せない自分が悔しい。)

 (ハイドの圧力に屈した自分が悔しい。)

 (なにより俺が弱いせいでサラが馬鹿にされたのが一番悔しい。)

 俺がもっと強かったら、彼女は馬鹿にされなかった。

 そんなことを考えながらひたすらに走った。

 そうして街を出て、道中弱い魔物を八つ当たりをするように倒しながら走っていたら、気がついとき俺はオリオン郊外の森まで来ていた。

 

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