テーマパークへようこそ!
「わぁーーっ!!」
「きゃあーーーっ!!」
我がテーマパークには自慢のアトラクションがある。それは“エレクトロレオロジー流体”を用いたウォータースライダーだ。
エレクトロレオロジー流体とは、電圧を加えることに依って固体のように固まる性質を持つ液体のことだ。
つまり、空間一つを丸ごとエレクトロレオロジー流体で覆ってウォータースライダーを作っているのだ。
これに依り、スイッチ1つで子供でも簡単に、ウォータースライダーのコースを自在に変えられると言うことだ。
直線コースからヘアピンカーブは勿論、作れないコースはウチには無い。
「わぁああーーっ!!!」
「ぎゃーーっ!!!」
…こちらも我がテーマパークの名物。その名も支配人ロボだ。
「ルールを守らない悪い子はおらんかー!!」
ルール違反をした子供には電気ショックでお仕置きをするのだ。これも子供達に正しくアトラクションを楽しんで貰う為だ。
中には支配人ロボを気に入っている子供もいるようで、何もルールを破っていないのに軽く電気ショックを受けに行く子供もいる。
──さて、そんなテーマパークで働く私のある日のことである。
「おじさん、ぼくの考えたウォータースライダーにのってくれる?」
小学生以下だろうかと言う年頃の少年に声を掛けられた。このテーマパークでは良くあることだ。
そして、何時ものようにウォータースライダーを駆け抜けてみると…
…それは何時ものウォータースライダーとは全く異なる体験だった。
姿勢が横を向いたまま、真っ直ぐに降りて行く。まるで自分の目の前を電車が通っているようで、これは大人でも恐怖を感じるだろうと感心した。
それから、上から降り注ぐエレクトロレオロジー流体の雨。これも飲み込みさえしなければ安全だが、未体験の者に取ってはホラーであろう。
我がテーマパークはこんなにも楽しい場所だったのかと満喫した時、ゴールにさっきの少年が待っていた。
「実に面白いコースだったよ。暫くは君のコースを採用させて貰おう!」
「ふーん…それはよかったな。」
と言って、背中から、支配人ロボが使用している電磁ステッキを取り出して私に向けた。
「ぐわーーーーーっ!!!!」
おかしい。電圧を有り得ない規模にまで上げてある。
「…悪い大人には、おしおきだよ。」
「ぐわっ…」
体中に掛かったエレクトロレオロジー流体が電圧に依って重りのように固まって行く。
「わ、私が…私が何をしたと言うんだー!?」
全身の固まった私は、そのまま地面に倒れ込んだ。