『友達に誘われて一緒にサンタ衣装を着ることになった胸も派手さもないレズ女』3/3
──深夜。
…同じく同校出身の寺崎 朱莉の家にやって来た。
…親友へのクリスマスプレゼントは明日でも間に合うだろうか?
朱莉「いらっしゃ~い♪やっぱり駄目だったんだ♪」
「やっぱりってゆーなぁ!」
「柚ぴは?」
「私に彼氏がいるように見える?♪」
奈月「畜生!リア充め!」
…それ意味分かって言ってる?
「朱莉、準備手伝うよ。奈月の残念会だね♪」
奈月「うぅ~…。」
玄関から一歩進んで、コタツに倒れ込んだ。…しかし、見てると何故奈月がモテないのかが分からない。
…まぁ、私には一生分からないか。
…黄色の液体を見詰めながら、親友を慰める台詞を考える。…どれもわざとらしいと思っていると、いつの間にやら液体は黄金色に焼き上がっていた。
奈「美味しそ~♪」
朱「おうよ♪ウチのタコ焼きはそんじょそこらのタコ焼きとはタコ焼きが違うよぉ♪」
何回言うんだタコ焼きって。
私「…いただきます…♪」
奈「いただきまーすっ♪はふっ、ほ!うあいねこれ!♪」
「あっはは♪ほら柚ぴも食べてみてっ♪」
「…ふ♪ふー、ふー…。」
「…ぁ~、食べた~~♪」
「…そうだね。」
…もう何年も前の、昼休みを思い出してふっと笑う。
「んふふ…♪」
「…アカリこれ寝てる?」
「…ぽいね♪」
「は~♪じゃ、このまま寝よっか♪」
「…。」
酎ハイじゃ傷心は癒えなかったか。
「…ふふぅ♪柚木っていっつも空気読んでるよね…♪」
けっこう酔ってるらしい。泣き出したりしなきゃ良いが。
「寝とけば?明日仕事は?」
「ふふふ休みぃ~♪」
「…ふ、そう♪」
私は仕事だ。…けど、朝まで付き合っても良い気がする。……あれ、酔ってるかなこれ…。
「ん~…。」
瞼が閉じて来た。
「…。」
寝惚け顔の奈月とは反対に、私の目は鋭く、冴えて行く。
「んっ…」
伸びをするように動く奈月の体を押さえ付けて、頬に口付けをする。
奈「んっ…!?…あれ?」
「…帰るよ。立てる?」
奈月を掴んだまま立ち上がり…手を放す。
「あ、うんっ…しょ。」
「…ぁ~~、寒い~…。」
「…ふぅ。」
カン、カン、カンと階段を降りる。
「…奈月の家のポストってどんな感じだったっけ?」
「えっ?」
「いや、プレゼントあげようかと思って。」
「え~?いいよぅ♪」
「男を落とすテクが詰まってるって言ったら?」
「え!?…って嘘でしょ。」
む。もっと酔わせとくんだったか。
「…いいなぁ~結月は。」
「…。」
あだ名と本名は同じなのに。…何故だか今のは名前で呼ばれたと言う確信があった。
「格好良くて、彼氏いらないなんてさー?」
「…ふ♪奈月に出来ないんじゃ、私に出来ると思えないもの。」
「え~何それ?ぶぅーっ。」
「ほら、早くしないと終電。」
「あ、うんっ」
…差し出した腕に寄り掛かるように奈月が歩く。…むにっとした胸が触ってゾクッとする。
「…もしかしてブラしてない?」
「あ…そうだった♪」
…まぁ、ヤケ飲みする前には外したくなるものかも。…しかし。
「…スケベ。」
「…ごめん。」
──空を見上げ、声を出さずに笑う。
…終電待ち。スマホを出し、忘れないようにカレンダーに書いて置く。奈月にプレゼント、と。
…胸を触られた時の危機感の無いあの可愛い顔を思い出して、こう書き直した。
──親友にプレゼント。
…液晶画面に水滴が落ちる。
「ぁ。雨…?傘持って来てないなぁ。家着くまでに止むかなぁ?」
「…天気予報見とけって。…折り畳み2つ持ってて良かった。」
「えへへ♪持つべきものは友だね~♪」
「……そうだね。」