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一章5「人類根絶派姉弟」

 黒乃がいない。

 さっき、ほんの数分前までそこにいたはずなのに。

 魂が抜け落ちそうな勢いで失意が襲う。

 ダメだ。諦めるな。きっと、どこかに逃げてるはずだ。


「あ〜れぇ? 君って代谷くんじゃない?」


 不意に背後で声がする。

 振り返ると、そこには異形が立っていた。


「君とは話したことなかったなぁ〜! 同じ学年なのに全然話す機会なかったもんなぁ〜! ずっと話したかったんだよ? 混骸同士さぁ!」


 まるで以前から知っていたかのように話しかけてくる「それ」は、影を立体化させ、複数の腕を生やした異形の形をしていた。声にはエコーがかかっており、目は赤く光っている。

 不思議と、恐怖はなかった。


「……黒乃はどこだ」


「んん〜? なぁに〜?」


「黒乃はどこだって聞いたんだよ‼︎」


「あぁ……花木さんかぁ」


 呟くと、突然影は体積を落とし、内側から人が現れる。

 紫の髪、赤い襷、鋭い目つき。


「峰森みる…⁉︎」


「違う違う、それはお姉ちゃん。俺は弟だよ!」


 よく見ると、青みがかった紫のショートヘアに姉より少し垂れた目つき。

 同じ学年であり、生徒会副会長・峰森ねろの姿がそこにあった。


「峰森、ねろ……」


「俺のこと知ってんの⁉︎ 嬉しいなぁ〜! 前からまひろっちには興味あったんだよね!」


「気安く呼ぶな。黒乃はどこにいる」


「かっくぃ〜! 警戒心ビンビンだね!」


「早く言え。どこにいる!」


「花木さんなら……ここさ」


 そういってねろはバン!と扉を叩く。「生徒会室」の文字が書かれている。


「そこに…いるんだな⁉︎黒乃は!!!!」


「嘘はつかない……だけど、行かせはしないよ」


「何?」


 ねろはそう言うと、穏やかだった可愛らしい垂れ目を釣り上げる。瞳孔が狭まり、まるで猫のような眼でこちらを睨みつける。


「花木さんを……『人間』を助けたきゃ、俺を倒していけよ‼︎ 共存派ァ‼︎」


 ブァッと空気が揺れ、再びねろを影が包む。

 口調が変わり、荒々しい気迫が漂ってくる。


「殺せねぇだろ……共存派は……! 人間も、骸も‼︎ 共存ってのはなァ、俺たちが生きる上での枷でしかねぇんだよ……! 人間は俺たちを殺す! だから! 俺たちは! 人間を殺すんだ!!」


「俺は守りたいもん守るだけだ……! 人とか、骸とか、関係ねぇ! お前には、わかんねぇ感情だろうな!」


 本当に恐怖はない。昨日や一昨日知ったこの世界、非現実的な目の前の生物。それなのに、怖くも何ともない。力が、漲ってくる。これが火事場の馬鹿力……!

 今なら勝てる。そう確信していた。


「お前は殺さねぇ……。混骸だからよ。お前も、こっちに来い。まだ間に合う。人間を抹殺するんだ。俺たちだけの世界を作るんだよ!!」


 そういうと影は、その体躯の二倍はあろう大きな骨の釜を作り出す。まって。それは反則でしょ。やっぱ無理だ死ぬこれ。

 良い確信は、本当に当たらない。

 ーーでも。


「誰も殺さねぇ‼︎ お前も、人間も! 俺も死にたくねぇしな!」


「へぇ……かっけぇなぁ……。死なねぇくらいに殺してやるよ!」


 影が飛びかかる。このまま食らえば真っ二つだ。

 体が強張ってしまっている。まずい。金縛りにあったようだ。指先さえも動かない。


 ピィ……ン……


 バタン。


 耳鳴りのような音がしたと思えば、突然目の前でねろが倒れた。まただ。あの不可思議な、目が合うと物体が停止する神の悪戯。また救われた。

 安心も束の間、急いで生徒会室の扉を開ける。

 昼時の暖かい日差しが差し込む部屋。静かで何もない。


「ーー! はめられたっ!」


 黒乃の姿は、そこにはなかった。

 ねろが目覚めるのもそう時間はかからないだろう。今は急いで、黒乃がいる可能性のある部屋を探さなければならない。


「あら、いつ、ここに花木さんがいないと言いましたか?」


 凛とした鈴の音のような声に思わず呼び止められる。

 誰もいない教室の奥。ロッカーが並ぶその上に、生徒会長・峰森みるの姿はあった。



今回登場したのは、

峰森ねろくん!!!

さぁ次回は激アツvs生徒会長です!!

見てね!

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