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side ラブラ・ドール 魔王との激闘

 あはは、可笑しい。


 

 魔王はちょっと緊張しているみたい。

 声が変わっているのと、魔王を演じているから、誰かまでは分からないけど、やっぱりあの子達の誰かみたいね。



 とはいうものの、何となく察しは着いている。

 柳君と大城君のどちらかだ。


 

 柳君ならもっとノリノリな雰囲気になりそうだし、本命は大城君かな。



 他の子達ならもっと分かりやすい魔王になってそう。 

 そして、あの女の子がイダルの村に魔王軍を引き連れて来た子ね……



 どんな恐ろしい姿をしているのかと思ったけど、見た目は可愛らしい女の子。

 生粋の殺戮者か、何か事情があるのか……

 対峙しているだけでは分からない。



 それにしても、流石は魔王ね。

 先生として見ているから、怖いなんて思わないけど、今まで戦って来たモンスターと比較すると、段違いのプレッシャーを感じる。



 それに、女の子の方はかなりヤバイ。

 臨戦態勢になってから嫌な汗が止まらない――かなりの手練れだわ。



 でも、感覚的にわかる。

 レベルは私達の方が上。



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名称:ラブラ・ドール レベル:27


種族:聖人 種族レベル:20


HP :64/64


MP :155/155


攻撃 :18


防御 :12


魔力 :78


敏捷 :20



耐性


【精神属性軽減(中)】【闇属性軽減(小)】【暗黒属性軽減(小)】



種族スキル


【霊感】【聖域】【アストラルギフト】【英霊の加護】



通常スキル


【スピリッツリープ】【ホーリーバースト】【スピリットオブケイン】


魔法


【マジカルガード】【フィジカルガード】【プリフィケイション】【ブレッシング】【ヒール】【キュア】【ホーリーアロー】【パニッシュメントシャード】【ジャッジメントレイン】




称号


【勇者】【霊能者】【宿す者】


∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽


 ここに来るまでのモンスターを全て狩って手札を増やした。

 強力な攻撃魔法も覚えたし、剣を使うラケシスとも相性は良い。



 戦いにおいて私達が遅れを取るような事にはならないと考える。

 余裕のあるうちに、魔王にされたこの子を助ける方法を見つけ出さないと。



 まずは、悠々(ゆうゆう)と向かって来る魔王に牽制の一撃を放つ。

 私の放ったホーリーアローに対して、魔王は黒い矢を放つ魔法で相殺する。



 すごい反射神経、でも関心している暇は無い。

 魔王はその場に留まる事無くこちらへ向かって来ている。



 魔王の放った魔法は恐らく闇とか邪とか暗黒みたいな属性ね。

 それなら私の攻撃魔法は効果的かもしれない。



 杖に魂を宿し、魔力と魔法の効果を向上させるスキル、スピリットオブケイン!

 そして、ブレッシングによって私の杖とラケシスの剣に聖なる属性を付与して、こちらの攻撃力を上げる。



 戦況が動き出す!



 ラケシスが私の横をすり抜け、魔王に向かって剣を振り上げる!

 でも、動いたのはラケシスだけじゃない!



 横から女の子が飛び込んで来て、ラケシスに向かって勢いよく飛び蹴りを当てる。



 きっちり防御したラケシスにダメージは無いみたいだけど……

 やっぱり強いのね、防御したラケシスの顔が青ざめてる……



 【聖域】によって私達には聖属性の補助効果があり、闇や暗黒属性の種族に対しては弱体効果が掛かっている。



 そして【英霊の加護】によって強力な戦闘補助効果もある。



 予想外の強さに驚いたけど、【アストラルギフト】による回復効果もあるんだし、落ち着いて対応して、勝負に焦ったりしなければ徐々にこちらが優勢になるはず。



 ラケシスの戦いばかり気にしているわけにはいかないわね。



 魔王も黙ってそれを観戦してはくれない。

 ラケシスがあの女の子倒すまでの間、私が魔王の相手をする!



 【スピリットオブケイン】の効果によって杖を使った戦闘技術も向上している。



 魔王の剣は早く、一撃の威力も高い。

 一見凄そうに見えるけど、大したことは無い。



 武器なんて扱った事も無いだろうし、当たり前よね。

 それに、ちょっと力むと剣を振り切る癖がある。



 お陰でこっちはその隙を突いて、攻撃する事が出来る。



 魔王の斬撃を【スピリッツリープ】によって回避し、背後を取り、思い切り杖を振り抜く!

 やっぱりいい反応ね!



 目の前に幻影を残し、いきなり背後から攻撃をしたけど、魔王は直前で回避行動をとったように見えた。



 回避スキルを使えば当たる事は無かったのに、間に合わなかったのかしら?

 魔王は私の一撃を受けて後ずさる。

 


 女の子の方はともかく、魔王の方は戦闘慣れしていない!

 私は魔王の懐までいっきに距離を詰めて飛び込み、杖の先を魔王の胸目掛けて突き出す!



 今度は完全に回避された。

 魔王が目の前から突然姿を消し、一瞬で距離を取られた。



 息が上がって、焦っている表情も丸出し。



 胸糞悪い。



 怖がってる生徒をこれから自分の手で追い詰めていかなくちゃいけない。



 きっとゲーム感覚のつもりで遊んでいたのよ。

 けど、現実を突きつけられ、本当に勇者が殺しに来ている。



 怖いに決まっている!


 

 そして、良かった。

 きっと魔王に会うのは私が初めて。



 もし、あの子達の誰かが、魔王を討たなければならないと言うのなら、私がこの手を血に染める。

 その覚悟を決めて私はここに立っている。



 当然だけど、それは最終手段。


 

 魔王であるこの子と話し合えるのならそうしたい。

 私は叫ぼうとした。



 「……!?」



 元いた世界での名前を口に出す事が出来ない。

 やっぱり対策されていたか。

 それなら……



 私は続けて、学校や先生、他の生徒の名前などを叫んで見たけど、やはり言葉にならない。

 それどころかペナルティーを与えられてしまった!



 レベルダウン……そして、強力な精神攻撃!

 耐性があるから耐えられたけど、次に同じような事をすればこの場で意識を失いかねない。



 冷静に考えよう。



 ここへ辿り着くまでに女の子と似たタイプのモンスターはいなかった。

 恐らく――あの子は魔王のナビゲーターの可能性が高い。

 


 それなら……



 『マインドディストーション』



 魔王の声が響き、私の頭を搔き乱す!

 まずい、今精神攻撃を……



 身体に力が入らない。



 杖を落とした?



 魔王が近づいて来る。



 「ブラッディスラッシュ!」



 剣の一撃が――!



 分かっていたのに躱しきれなかった。



 でも、間一髪で致命傷は避けられた。



 気を強く持て私!

 私がこの子を守らないと!



 目の前にいる魔王に向かってスキルと魔法を放つ!



 「ホーリーバースト! パニッシュメントシャード!」



 手から生成した聖水を爆発させるホーリーバーストのスキルを使い、追撃にパニッシュメントシャードによる光の散弾で目くらましと、ダメージを与える!



 まずは体勢を整えないと――!?



 「どうした? そんなものか!」


 

 私の攻撃を受けても魔王は怯まなかった!?

 レベルが下がってるせいでスキルや魔法が弱体化しているのか……



 杖を落としてしまったのはかなり痛い。

 今すぐ拾う事は出来ない。



 追撃の魔法か!

 魔王の一撃が私を襲う!



 最初に使った黒い矢の上位の魔法ね。

 不意を突かれて回避が間に合わなかったけど、マジカルガードによってダメージを軽減した。



 思ったよりダメージは深刻だなぁ。



 すぐにヒールで回復して、スピリッツリープで距離を稼ぐ。

 正体は分からないけど、魔王のスキルが辺りを影で覆っていく……



 このスキルは、ここに来るまでに会った狼のスキルに似ている。

 きっと影から強襲して来るつもりだろうけど、むしろ好都合。



 【聖域】によってこの手のスキルの効果は薄い。



 影が膨れ上がり、そこに魔王が居る事を察知した私は、再びホーリーバーストとパニッシュメントシャードで魔王を攻撃する。



 焦っているのか、魔王は「悪あがきを!」と口にして悔しがっている。

 私は僅かに出来た隙に、自分の杖を回収して、更なる追撃の一撃を加える。



 私の切り札である攻撃魔法ジャッジメントレイン、無数の雷が魔王を襲う。

 攻撃力が弱くなったとはいえ、私の属性が魔王の弱点だとすれば、勝機はある。


 

 それを証明するように魔王は膝から崩れ落ち、苦しんでいる。

 私は一呼吸おいて、冷静に周りの状況を見渡す。



 ラケシスの方も順調みたい。

 女の子の方は立っているのがやっとと言った感じ。



 私は気づいてくれと、願いを込めてラケシスに声を掛ける。



 「さすがねラケシス!

  もう一息よ!

  頑張って!

  ナビゲーター!」



 ナビゲーター、もしあの女の子もラケシスと同じように自らをナビゲーターと名乗っているのであれば……



 この言葉で私の伝えたい事が伝わるかもしれない!



 「ラフナ……お前も負けてるじゃないか……

  勇者、ナビゲーターと言ったな――

  名前を聞かせてくれ……」

 「私の名前はラブラ・ドール!

  それ以上は言えないわ!


  私はあなたを――ラケシス!」


 突然ラケシスは魔王に向かい剣を突き立てた!

 魔王は膝をついたまま口から血を噴き出す。



 「待て、俺に止めを刺す……な……」

 「往生際が悪い!

  止めだ!

  魔王!」



 無情にもラケシスは魔王の首を跳ねた……



 でも、私は生徒を殺してしまったと言う罪悪感には(さい)まれなかった。

 なぜなら、魔王の死を確信したその瞬間――

 私は途轍(とてつ)もない恐怖に襲われたからだ……



 首を跳ねられた魔王の姿が大きく膨れ上がり、狼の獣人の姿となって現れた。



 ラケシスの三倍はあろうかと思える大きさで、一瞬にしてラケシスの肩から上が無くなった。

 どんな攻撃か見る事は出来なかったけど、血の滴った牙が何をしたのかを物語っている。



 これは絶望だ。



 ここで私に出来る事など、何も無い。



 選択肢など存在しない。



 私は逃走する事を決意した。

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