表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/31

チュートリアル③ 魔王の進軍 イダルの村

 「さて、俺の仕事はこれで終わりと言うわけでは無い。

  そうだな?」

 「はい!

  人間共を滅ぼす事こそ魔王であるアムルタット様の目的にご座います!」


 「はっはっは、ならば勇者が来る前に一つ、脆弱な人間の村でも滅ぼすとしよう」

 「丁度良い村があります!

  イダルと言う街で、人間共の密集している城や街からは離れているのですが、お力をお試しになられるのなら丁度良いかと!」


 「わかった。

  低位のモンスターを統率するのは難しいな。

  ならば傀儡であるゴーレムやアンデッドを生み出し、それを我が軍とする」



 ◆


 【ストーンゴーレム】

 主の命令に従い役割を務める。

 石で出来ている為、重く、動きは遅いが耐久性に優れている。

 

 【トレント】

 歩く樹木の様な風貌のモンスター。

 幹の部分に顔があり、動きは遅く見えるが、巨大な為、何の障害物も無い場所では平均的な人の足よりは速い。


 【ゾンビ犬】

 体の所々が腐敗している為、身体は脆いが、俊敏な動きと牙は健在。

 アンデッドモンスターの為、生者を襲うが、主の命令には従う。


 【ソンビ】

 死んだ人間がアンデッドとなったモンスター。

 元となる人間によって知能は変わるが、本能的に生者のを襲って喰らう。


 ◆


 

 これにスケルトンの軍勢も加えれば村の一つくらいは直ぐにつぶせるだろう。

 召喚にはHPとMPを消費してしまうが、それに構わず次々に召喚して行く。



 ふう、総勢五十のモンスターを目の前にすると、圧巻だな。

 巨大な体のトレントにストーンゴーレムが五体ずつ、スケルトンが二十とゾンビとゾンビ犬が十体。



 早速イダルの村へと行軍するか。

 

 

 「隊列を崩さず、俺について来い!」


 「アムルタット様?

  自ら行かれるおつもりですか?」

 「ああ、駄目か?」


 「いえ、魔王様はお城から離れる事が出来ません!

  支配した地であれば、分身体を送る事は出来るのですが……」

 「そうなのか」



 試しに城から遠ざかって行くと、見えない壁に阻まれ、先へ進めない。

 不自然ではあるが、当然の事か。

 ラスボスが出歩いているゲームなんて聞いた事が無い。



 「仕方ない、ラフナよ、イダルの村を攻め落として来い」

 「畏まりました!」



 意気揚々と魔王軍を引き連れて旅立ったラフナを見送り、玉座へと戻る。

 状況を見る事なんかは出来ないのだろうか?



 テレパシーでコンタクトを取って見るか。



 『ラフナ、聞こえるか?』

 『はい!

  テレパシーをお使いになったのですね!』


 『そうだ、戦況を見たいのだが、方法はあるか?』

 『それは難しいですね。

  アムルタット様のレベルが上がれば、そういったモンスターを召喚するなどして可能にする事が出来ると思います』

 『わかった』


 戦況を覗く事が出来ないのは面白くないな。

 今後の為にも観測するタイプのモンスターを作っておきたい。



 今はテレパシーによるラフナからの報告を待つとしよう。

 


 待っている間、暇なので観測するタイプのモンスターを作ろうとしたが、そう言った特殊な能力を持ったモンスターは上位クラス以上でなければ作れないらしい。



 それでも抜け道は無いのかと思い、試行錯誤している。

 結局どうする事も出来ずに日が落ちて来たな。

 


 ラフナ達はどうしているのだろうと、意味も無く城の高い場所に上り、ラフナ達の向かった先を眺めていた。



 景色は良いが、森が邪魔で遠くの方は見えないな……


 

 ん?

 俺の体の中に何かが流れて行くのを感じる。



 この満たされる感覚……気持ちいい……

 人間達の恐怖が伝わってくる――ラフナ達が人間の村を蹂躙している――味か。

 はっはっは、これはいいぞ!


 

 ラフナ達の活躍を見れないのは残念だが、クククッああ――これは楽しい!

 もっと人間達を蹂躙したい!


 

 俺は魔王だ。

 


 ははは、俺は魔王なのだ!  

  

 

 満たされる感覚が徐々に薄れ、冷静さを取り戻して来た……

 うん、ちょっとだけ恥ずかしかったな。


 

 しかし、俺は魔王だ。

 これからは、とことん魔王らしく振る舞ってやろう。



 空気が冷え込み、暗くなってきた所で、ようやくラフナから連絡が来た。

 


 『アムルタット様!

  村を壊滅致しました!』

 『ご苦労であった、問題は無かったか?』


 『当然です!

  アムルタット様の創造したモンスター達が強く、村の人間も少なかったので!

  なんの問題もありませんでした!』

 『そうか、なら帰ってくるのだ』


 『分かり――ん?

  ました!

  この周辺を支配する為に、連れて来たモンスター達を置いて行こうと思うのですが、いかがなさいますか?』

 『好きにするのだ』



 それにしても、一人で待っていると言うのは退屈だな。

 話し相手になるモンスターでも居てくれれば、良かったんだが……



 よし、召喚しよう。

 


 試行錯誤の末、新たに生み出したしたモンスター達を召喚して遊んでいると、ラフナが帰って来た。



 「只今戻りました!

  ……なんですか?

  この畜生共は?」

 「愛玩用に生み出したモンスター達だ」


 「愛玩……」

 「気にいらなかったか?」


 「いえ、アムルタット様の生み出した者であれば素晴らしい事は間違いないと思います」

 「そう――か」



 あからさまに不満がある様だな。

 何が気に入らなかったのか?



 ラフナが戦っていると言うのに俺が愛玩モンスターと遊んでいたのが気に入らないのか、それとも好みの問題か……



 ◆


 【アイディールラビット】

 非常に人懐っこい性格をした兎のモンスター。

 名前を呼ぶと元気に駆け寄ってくる。

 主の命令には忠実で、人間の畑に現れ作物を荒らす!


 体毛が長い為、丸々として見える。

 毛並みは非常に滑らかで艶があり、個体によって毛色が違う。


 成獣となっても子ウサギサイズの大きさで、芸や躾する事も可能。


 【ビッグアイディールラビット】

 アイディールラビットの大型種。

 大型種ではあるが、元々が小さいので、体重にして2500g程度に留まる。

 

 ◆



 こんなにも愛くるしい見た目をしているんだ、好みの問題と言うわけでは無いだろう。

 機嫌を損ねた理由は分からないが、まずは労いの言葉を掛けて様子を見るか。



 「ラフナよ、イダルの村の殲滅だが、よくやってくれた。

  俺に出来る事は限られているが、何か欲しい物でもあるか?」

 「欲しい物――ですか。

  愛……ですかね」


 「愛か、目の前にいるアイディールラビット達を見てみよ」

 「……畜生――ですかね」


 「動物は嫌いか?」

 「どちらかと言えば好きな方ではございますが、アムルタット様の愛玩モンスターとして生み出されたこの畜生共の事は嫌いですね」

 


 露骨に嫉妬心を出して来たな。

 機嫌を直してくれないと、この先気まずい。



 頭でも撫でれば機嫌を直してくれるか?

 俺はラフナに近づき頭に手をやるとさっきまでムスッとしていた表情がパッと明るくなった。



 「ラフナは獣では無いので!

  そんな事をしても!

  喜びませんよ!

  ふふん♪」

 


 随分とテンションを上げて来たな。

 言葉とは裏腹に、目を細めて嬉しそうな顔をしている……

 手を引き戻すと、再びムスッとした表情になったので、再び頭を撫でる。



 猫みたいな奴だな。



 「ところで、ラフナよ。

  勇者が攻めて来ると言っていたな?

  それはいつ頃になるのだ?」

 「そうですね……近いうちにとしか言えませんが、明後日くらいにはやってくるのではないでしょうか?」

 


 早ければ明日にでもやって来そうだな。



 チュートリアルの勇者程度にあれこれと考える暇は無い。

 だが、仮にも勇者、今ある戦力を使い回すだけと言うのも失礼だろう。



 新しいモンスターを用意して待っていてやろう。



 それに、俺と戦う前に死んでもらっても困る。

 城に待機させるモンスターの数は少なめにしておいてやるか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ