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百合姫様

 この異世界群は魔法による発展をとげており、物質文明的には中世くらいのところがほとんどだ。コスメといったってさすがにオレの元いた世界ほどのものはない。が、魔道具というカテゴリーではないようだが、化粧道具も何らかの魔法が関与している。リップ、ペン、フェイスブラシのように見えるが、それ自体に素材が含まれている使い捨てのものが主流だ。


 使い方もこういう感じに引いてくれと念じればよい。化粧の技術を習得する必要などない。色のバリエーションが少ないのは少々不満はあるのだが、リップが食器についてしまうこともないし化粧崩れもしにくいようだ。それでいて、化粧を解きたいと念じて顔を洗えば簡単に落ちてくれる。クレンジングクリームも不要だ。


 マニキュアはないがガラスという素材は存在するので、ガラスヤスリで爪を磨き、オレンジ系のシャドー、真っ赤ではなくカシスレッドなリップ、アイラインを少々。元の世界で男だったころ化粧をしたことはなかったが、色彩感覚はよい方だ。少なくとも背伸びしてやたらケバくなってしまったJKではないと思う。


とか何とかいいながら、「あたし、可愛い♪」が嫌いなわけではない。32しかないポケットストレージの10を化粧品に回しているオレという存在のジェンダーは何処に?


 さて、そろそろ行くかぁ〜。スカートのポケットは便利だが大きなものが収納できないという欠陥があった。例の装備(セーラー服)のおかげで極寒の地で直接地面に寝ても凍死することはないのだが、さすがに寝心地が悪い。グランドシートと寝袋、暖かいものを食べられるように飯盒などの食器が入ったリュックを背負った。昨日調達してもらったコートがありがたい。こうしているとエルフの旅人に見えるのではないか。この世界では目立たない。ハズだ。


 治癒魔法のアビリティーがないオレに医薬品はマストだし、ドライフルーツや木の実といった携行食、水筒なども必要だが、それくらいならポケットストレージで保管できる。着火剤については着火の魔道具という超便利なアイムを二回目の世界で調達できたので指輪に記憶させてある。


 コートの下に皮のベルトをしてサバイバルナイフを刺した。このナイフは護身用ではなく、木を切って薪にするために使う。残念ながら魔道具ではないナイフは指輪収納できないし、丸腰でソロの旅人というのは怪しい感じがするのでは?というオレなりの深謀遠慮もある。いずれにせよ三回の転生の記憶からサバイバル技術についてはプロ級と言ってもいいだろう。


 早々にモラーヌに挨拶をして、ここ城塞都市サンクトブルクを辞するつもりだったのだが、メイドが伝言を伝えに来た。


「アナシア姫がお忍びでおいでになりました。どうか朝食だけでもご一緒いただけませんでしょうか?」


 アナシアはこの国の王女。皇位継承者になるらしい。オレを召喚したご当人だ。直近の都市国家ベルムートまでは徒歩だと一週間くらいの工程。夕刻までに渓谷を抜け森林地帯で野宿したいので早く出立したいのだが、さすがに断るのは無礼だろう。オレは朝食が準備されたテーブルに着くことにした。モラーヌの流し目はシカトしておく。


が、この姫様は……


「我が国をお救いいただきまことにありがとうざいます!」


と、謝辞を述べるなりオレに抱きついてきた。


 この国の人族の典型である栗色のロングヘアーにエメラルドの瞳。細身で貧乳の体躯は160センチといったところか。まだ十代の後半という若さだが、王女で裕福ということだろう高級そうな香水の香りでむせ返りそうになる。待て、アレ、この子も。ヤバイ。頭にピンクの霧がかかってきた。


「あん♪」


 思わず堕ちる合図がでてしまったが、姫様の克己心により救われた。ピンクの霧が晴れていく。ふぅ。だが、後でパンツは新しいものに代える必要があるだろう。


「我が国、いえ。人界を救っていただいた勇者様にこのような非礼極まる扱い。どうか、わが父をお許しください」


 ひとまず人界だけの知識しかないのだが、この世界は六つの国によって成り立っている。規模的には古代ローマ帝国といったところか。六つの中で最大の国はダルク帝国と称しその王は格上とされ皇帝を名乗っている。人族、人と友好関係にあるエルフ、ドリュアド、ドワーフ、マーメイドといった亜人からなる人界を統べるということらしい。


「いや。オレから申し出たこと。姫様が気に病むことはありせん」


「貴女様のお力は神にも比するもの。父は貴女様が怖いのです。どうかお許しを」


 クドクドと謝罪を述べる姫様なのだが、若さに似合わずなかなか見識の高い御仁のようだ。オレが目立たず行動したいという点についても、一瞬でその意図を理解し父である王を説得してくれた。このような優秀な人材はさっさと王位につけてしまった方がいい。王女様と騎士殿はオレを次の町まで護衛すると言い出した。


 騎士殿の武技は当然として、この王女、魔道士としても相当優秀だ。そもそもオレを召喚したのだし。二人がいれば百人の兵より頼りになるには違いない。だが、青姦、3Pプレイなどごめん被りたい。


「お二人がいらっしゃれば、百人の兵士より心強い。ありがたいお申し出だが、ベルムートまで往復すれば半月ほど。その時間でやるべきことがあるのでは?」


「魔軍は撤退ししばらくは襲ってはこないだろう。だが、農地は荒れ交易は途絶え戦がなくとも、放置すれば、この国は滅んでしまう。一刻も早く復興に向けた施策を打ち出すことが肝要ではないのかな?」


 ちょっと強引かなぁ。我ながら上手く説明できたと思うのだが……


「ごもっともでございます」


 姫君は平伏した。


「やめてくれ。貴女はこの国をまもなく統べる方。めったなことで頭などお下げになるな」


 ふぅ。姫さんの利発さに救われた感もある。もちろん目立つからという理由で兵士の警護も断ることにした。突然、暗殺者(アサシン)にクラスチェンジするような送り狼は不要だ。まだMP(マナ)が回復しきらない体調で不安はあるが、早く闇に紛れることを優先した。

今回は、切るところが見つからなかったので、少し長めです。


まず、お化粧ですが、普通TSしたらするでしょ?と思い書いてみました。この世界には魔法がありますので、毎朝、女性がメンドウに思っているようなことはありません。おそらく数分で完了です。


でも、時々、見かけて気付いてしまうこと自体、私、ヤナヤツです。JKさんでいかにも化粧慣れしていない(濃すぎる)子いますよね。あれはあれで初々しいですが。


もっとヤナヤツネタでいうと。私、外にいるといつもキョロキョロ。そんなにいろいろ見ちゃ〜ダメだヨォと友人に注意されます。一般に男性は女性の顔見て、胸見て、足見るらしいのですが、服見て、靴見て、化粧見てます……ああ、言っちゃったぁ〜。人間観察面白いですが、お巡りさんに捕まらないよう気をつけます。


で、アナシア姫ですが、若いが強かという設定です。中盤くらいでスゴイこと言ってくれます。私たちの世界だとちょっと肌の色が違うくらいで差別があったり、性別年齢でもまだまだ固定観念が抜けきれないところがあると思います。私、フェミニストでもないですし、性差別がぁぁ!とか思わないですが「かくあるべし」みたいなの。


でも、亜人がいて魔族が跋扈する異世界ならどうでしょう?人族の間での差異なんて些細なものと感じるのかなぁ〜と、でも逆に人、亜人、魔族では何らかの差別問題があるんじゃないかと。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・化粧関係が詳しく入ってること [気になる点] ・指輪でコピーできるのが魔道具のみというのは不自然なので、何かしらの説明を入れた方が自然だと思います。(読み忘れならすみません) [一言] …
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