メスの本懐
「それとこの毒味の魔道具は?」
「ああ、騎士殿を疑うつもりは毛頭ない。無礼はお許し願いたい。だが、オレは三度転生し今回が四度目。三度とも味方の裏切りで死んでいる。三度目は特にひどかった。もう少しのところで毒を盛られた」
「勇者様。無礼を承知でお話し申し上げます。その件は予ねて王様より伺っておりましたが、勇者様を誅するなど人にあるまじき行為と思っておりました。しかしながら、あの大魔法を目の当たりにすれば……お許し下さい。私は兵士です。王女様の盾にならんとする者です。しかし、しかしながら、恐ろしゅうございました。あれは。あれだけは。恥ずかしながら見ていてしばらく手の震えが止まりませんでした。ですから、どうか御身ご大切に」
オレが平静でいられるのはひとえにアストリアの障壁のおかげなのだろう。
「気に病むことはない。アレを見ればなぁ。騎士殿はオレと違い、血の通った人ということだろう」
「何を仰いますやら。勇者様は表情は平静であられますが、使命のため、我らに代わり一身にその重荷を負っていただいております。私にも分かります」
うっ、このシンパシー感やばくないか?
「では。お食事をお持ちいたします。事情は存じておりますから、どうか遠慮なく毒味をいたされてからお召し上がりください」
魔法には代償が必要。その通りなのだ。死の魔法を使うオレは一切の動物性タンパク質を摂取することができない。食事といっても黒パンにコーンスープ、木の実、ドライフルーツというくらいのものだ。
ところで、この毒味魔道具だがリトマス試験紙のようなものだ。バーベキューの串を小さくしたようなソレは毒を検知すると柄についた宝石が赤くなる。オレは串を食事に刺しながら夕食を終えた。この魔道具もスキャンしておこう。だが、もう少し検知する毒の範囲の広いものを買った方がいいかな?
いずれにしても長居は無用。明日はこの街から出ていくつもりだ。目立たず、目立たずに、女神様を探さないといけない。
オレは食事を終え、湯をもらい、明日からの旅の準備をしていた。準備といっても指輪とポケットのお陰で持ち物は少ない。そろそろ寝ようとしていたところにノックの音がした。
「騎士殿か? 本日は大変お世話になった。目立たぬためとはいえ、王に挨拶もなく旅立つ無礼はお許しいただきたく……」
「何を申されるやら。勇者様がいらっしゃらなければ、我々はもう討死していたに違いありません。人を人界をお救いいただき感謝の言葉は言い尽くせません。先ほどは恐怖などと申し上げましたが、勇者様の重荷。人の罪を一身に背負われるお姿は神の子のようであります」
アレ? 芝居がかってきたぞ。ズカっぽくないかこの女騎士さま。そもそもそっちに椅子があるだろ。なぜベッドのオレの隣に座る。ちょっと待て、この感じ。またか。前世三つからもう何度目だ。
どうやらオリジナルの人だったオレのスタティックなアビリティとして百合子を引き寄せる力が備わっていたようだ。それに加えてこのピアス。女神様だけに反応すると思ったオレがバカだった。オレに欲情するあらゆる百合子に対応していたのだ。そう。ピアスのサブ機能は欲情の度合いに比例する。
現状で言えば頭の中にピンクの霞がかかってすでに思考停止状態。言われるがまま、されるがままだ。まぁ、男の欲情に反応しないのが唯一の救いだろう。女性は強い子孫を残すという本能で相手にシンパシーを感じないと欲情までは行かないケースが多い。だから「敵」がこのピアスのサブ機能を発動させることはないと思う。思いたい。
この日、オレはキッチリ、メス堕ちしてしまい女騎士さまと同衾して朝を迎えた。もう、どうでもいいから、完堕ちしてキレイな女にブヒブヒ鳴くメス豚奴隷になってしまった方が楽ではないか? とも思う。
だが、アストリアが施したPTSDから魂コアを守る外殻は特別強固なものだった。一晩寝ればコロッと我に返ってしまうのだ。戻るのは嬉しいようで何とも言えない気持ちだ。なぜならば、元に戻るがゆえに墜ちるという経験を何度も繰り返すからだ。ああ、これ、ヤツの孔明の罠なのか。
「うふ♪ 墜ちるところを見てるのが萌えるのよ」とか、ありそうだ。
いずれにせよ、一晩寝れば。一定時間経過すれば、女神様のありがたい思し召しでオレはどんなストレスを受けても我に返ることができる。
とはいえ、翌朝。オレは鏡の前でお化粧をしていた。
この心とこの体、ジェンダー認識については微妙なバランスの上に成り立っている。ネトゲでネカマプレイをした紳士諸君ならなんとなくわかると思うのだが、自キャラは可愛く飾ってやりたいと思う。そうだろう?
ご愛読ありがとうございます!ーーと書いていいのかな。前述のようにTwitterやメール告知で自分を追い込むところから始めました。するとメール返信で「読んでみたがノリについていけない」というコメをいただきました。それはそうかもです。てか、にも関わらず、わざわざ読んでいただいて恐縮です。
ラノベやアニメに異世界転生物というジャンルが確立していて、数々のヒット作を生んだもののさすがに昨今マンネリ化。それを打破する方向性として(1)開き直る(2)何らかの新奇要素を入れ捻るーーなんだと。本作は(2)のつもりです。
でも、その大前提である異世界転生物、さらには、アニメ・ゲームなどのサブカル知識がないとネタ元が分からないので良し悪しをご評価いただく以前である気がします。
……ということは最初から認識していたので、告知したところで前提を満たす方はごくわずか。かつ、読んでみようかと考える人の数ですから、数人に読んでいただければ大成功という目標でした。ですが、ですが、ランキング参加していないのにブックマークが20件超えました!告知で知った人以外の方、いますよね、いますよね!超嬉しいですぅ〜♪
ということで、お待たせしました!やっとTSF物の核心です。ですが、R-18じゃないのでサラリですねぇ〜。この物語についての独自性は、堕ちるけど戻っちゃうというあたりでしょうか?とはいえ、受け入れてしまっている部分もあり主人公のジェンダー感は当人でも理解できない曖昧な中にある……という設定です。
で、音声作品でもよく目にします。TS百合物ってマニアックですが人気のあるジャンルだと思います。なんでかなあぁ〜と分析してみました。
・百合が好きな男性は多い、BL好きな女性も多い。「隣の芝は青い」効果。
・フィクションでもリアルでもH自体は男性から見て女性の方が得してるように思える。これは後に妊娠出産という大役がある女性へのご褒美というお話を聞いたことがありますが、得する側に回りたいという潜在願望が男性にはあるハズ。
ですので、主人公は基本受け専門です。だってTSしてるのに攻めなら、男女Hと同じで意味ないじゃん。
ということで、タイトル通りのパートでした。ですが、個人的にハーレム物は好きではないので、アストリアと再会した後は、二人のラブラブ(歪んだラブラブですが)に路線変更となり、かなりタイトルから外れて来ます。




