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百合磁石なオレ(♀)が異世界で「受ける」お話  作者: 里井雪
桜色の魔法

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7/81

あるJCのこと

 目が覚めるとモラーヌの屋敷の一室だった。洗ってノリを効かせた清潔なシーツの香りが心地よい。


「お目覚めか? 勇者様」


「なんと。付いていてくれたのか。申し訳ない」


「いえいえ。勇者様をお守りするのが私の役目ですから」

元々、オレはこの国の姫様によって召喚された。彼らはオレを魔王、オレたちからすれば「失道した神の魂を持つ者」を討つ勇者だと思っていたようだ。正確には違うのだが、できるだけオレの正体は知られない方がいい。


 アストリアのことは、各世界に伝説や予言という情報で伝わっており、オレの存在は女神様の人としての誕生を意味する。魔王が敵の誕生を悟るかもしれない。そうなると、まだ子供でしかなく神としての自覚もない女神様の命を危険に晒す。


 だから、オレの魔法についても隠蔽工作をするよう王にお願いした。あくまでオレの魔法は敵を眠らせるだけ。火を放って敵を焼き殺したことにしてくれと。この世界では貴重な燃える水、石油の使用を王は渋ったが、聡い姫君の推しで何とかオレの提案は受諾された。


「そうか。兵士が火を放ったのだな」


「ええ。魔族とはいえ焼くのには抵抗がありますが、致し方ないことでしょう。それにしてもこの臭い」


「数ヶ月は臭いが残ってしまうだろう。どうか許せ。だが、死体は五万。焼くか埋めるかしておかねば腐って流行病の元ともなろう」


「その通りです。勇者様。兵にはその旨言って聞かせております」


「それはそうと。早々で申し訳ない。お頼みした物は?」


「はっ、まず、黒のコートでございます」


「着てみていいか?」


 コートといってもフード付きのパーカーのようなものだ。サイズはピタリ。クソ。今までの転生で一度もこれを思いつかなかった。あの装備(セーラー服)はあまりに目立ちすぎる。だが、機能が優秀すぎる。防御力もさることながら寒暖の調整能力が半端ない。走るにしてもローファーは底が浅くて脱げそうになるハズなのだが、足と一体になったような履き心地。


 ということはだ。オレは永遠にこのちょっと着古されたセーラー服を着て過ごすという運命にあるということだ。うううーー。せめて下着だけでも変えようと外してみたが、全ての効力が無効となってしまう。セット装備ということになるようだ。


 とはいえ、愛着がないといえば嘘になる。それはこの元の持ち主のJCの話を聞いてしまったからだ。アストリアは天界に迷い込んだと言っていたが、詳細を聞いてみると、どうやら自殺を図ったということらしい。かなり激しい虐めを受けていたようだ。


 学校の屋上から靴も脱がずに飛び降りたのだが、たまたま女神様が世界観測のために作っていた天界へのゲートに飛び込んだ。天界へは一方通行。人界での存在は消されてしまう。死ぬこととあまり変わりはしない。天界に来た時は動揺していたようだが、アストリアは優しい神であることには違いない。


 二年ほどのんびり過ごして、彼女の希望で優しそうな両親の子供として転生する道を選んだそうだ。虐めから自殺というトンデモない人生の対価としては安すぎる気もするが、普通の人の身では決してできない「親を選ぶ」という特権を与えられた。せめてもの慰みだろう。特例中の特例、ルール違反になるらしい。今頃、幸せに過ごしていればいいのだが。


 ……って、待てよ。キャミなしでブラの上に直接セーラーを着る女子なんていないハズ。二年もいたのだからスキャンしてないなんて嘘に違いない。クソ。あのエロ百合女神め。どうせ、セーラー捲ってブラからポロリのエロ漫画でしかあり得ないシチュを楽しむつもりだったに違いない。


 というか天界で暮らしている際、あのピアスを使って実演をさんざんヤラレてしまった。まぁ、人界での存在が消える天界への転送を無闇に使わない節度ある女神様だ。その程度は許してやってもいいかもしれないが。


 あ、でも。待て、待て、待て!! アイツ、まさか、まさか、男は初めてと言っていたが女のことは聞いていない。JCに手を出してたら犯罪だぜ。今度、会ったら問い詰めておかねばなるまい。

また話が戻りますが、制服についての前日譚を入れました。セーラーをめくると……エロ漫画でよく見ますが、アレはないと思うんです。汗もかくので、毎日洗えない冬服は特に不衛生ですしね。


ところで皆さん。神様っていると思います?私はそれなりの確率でいるんじゃないかと思っています。なぜ?って。だって、人類など、こんなに複雑な生命体が全くの偶然で進化する確率って極小だと思いません?むしろ誰かが意図的にやったとする方が合理的な気がするのです。


でもですねぇ。いるなら、この世界のグダグダ感ってなんでしょ?「おいおい、マジ、神様、真面目に仕事しとんかい!」と言いたくなります。この物語では、そうしたいけど簡単にはできない、としたわけです。でも、もう一つ考えていることがあります。それはね。「全然、やる気がないから」という理由。だって、もし夏休みが永遠に続いたら宿題やる子いないでしょ。人は生命が有限であるからこそ、何かを成そうとするのではないでしょうか。神の命が永遠なら全く無気力なんじゃないのかな。永遠なんて呪いです。

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