レップラップの指輪とセーラー服
「ね。ね。百合ってとってもいいでしょ。これから私のことはお・ね・え・さまって呼ぶのよ。ゆ●ちゃん」
「ああ、オレどっちかと言うと白●薇さま推しなんだが。分かった、分かったから。説明を続けてくれ」
「この指輪。レップラップの指輪っていうの。で、分かるわよね。貴女なら」
「3Dプリンター?」
「そそ。単純な魔道具ならその素性を分析してデータを蓄える。天界から素材をワープさせ、いつでも、どこでも、その物体を顕現させられる。記憶できるのは魔道具に限られるけど、かなりの優れものでしょ? 試しにアナタが着ていく服をスキャンしておいたわ。ほら」
「コ、コレ?」
指輪から出て来たのはセーラー冬服。腕のところに「中」を模ったエンブレムがあるのでJC用のものらしい。胸当てと襟、袖には臙脂の三本線。同色のスカーフがスカーフ留めで止められている。あとはヒダスカート。JC用にしては短すぎる。アイツの魔改造に違いない。お決まりの紺のニーソと茶色のコインローファー。そして。下着。あああ、くまさんパンツとスポブラはないだろ……だが、今のオレの姿にはピッタリのコーディネートともいえてしまう。
「なんだコレ。新品をスキャンしたんじゃないな。肘やスカートの後ろがテカってる」
「ああ、ごめんね。貴女の世界の物を入手するのは難しいと言ったじゃない。たまたまこの間、JCが天界に迷い込んだのよ。ちょうどいいからスキャンさせてもらった。大丈夫よ。私が強化魔法をかけてるから、『普通の』剣では簡単には切れないくらいに丈夫だし。靴は足にピタッとすいついて疲れ知らず」
特にオレの世界の服装にこだわることないんじゃね? トランスジェンダーのことを考えると中高の制服はブレザータイプがいいのかもしれない。リボンとタイ、スカートとパンツといった選択も可能だし見た目の相性もいい。
一方、セーラー服はオリジナルが軍服であるはずなのに、妙に「女」を意識させられる仕様だ。女神様の洗脳戦略なのだろうが、既にどこから見ても女の子の体。もう。どうにでもなれ。
オレは左手の薬指〜女神様がどうしてもそこに嵌めろと煩かったので〜に指輪をして、パンツ、ブラ、ニーソ、スカートと履いて、セーラーを被りスカーフを止めた。あ、思ったより軽くて着心地もいい。手を上げると横っ腹が見えてしまうが。
「キャミとかないのか?」
「ああ、ごめ。スキャンし忘れたんだな。ま、衣服は込められた魔法の媒体でしかないから。薄着でも寒くも暑くもないハズ。これ一枚でサハラ砂漠から南極まで全然大丈夫だと思うわ。破れたら何度でも作り直せるし」
「待て。剣でも簡単に貫けないと言ったな。それが破れる事態って何だ? 普通ではない剣もあると?」
「うん。正義をなし世界を救うってそんなに簡単じゃない。でも、貴女は失敗しても経験値を積める唯一の存在。期待してるわ」
「納得はいかないがそうだということにしておくか。それに、オレにだって一応良心はあると思うぞ。世界を救うことを悪とは思わない程にはね。そうだ。指輪に記憶できるデータは限りがあるんじゃないのか?」
「アイテム数と考えて貰えばいいわ。単純な魔道具と言ったのは記憶できる1アイテムの複雑さに限界があるってこと。データベースの1レコードの大きさみたいな。でもアイテム数は実質無限かな。18,446,744,073,709,551,616。気持ち悪いなら天界に戻った際に整理すればいいわ」
「あ、それから、その指輪は三つあるの。一つは貴女。もう一つは私」
「スペアが一つ。これは私と貴方の両方が死んだら天界に回収されてしまうのだけれど、人界の誰かが装備できる。アナタがこの人は! と思う人にあげて。私の分と二つをあなたに預けるわ。スカートのポケットに入れておけば決して落とすことはない」
と言って、女神様は残りの指輪二つを差し出した。性能は同じだが嵌めるべき人を象徴した宝石があしらわれている。オレが嵌めたのは黒玉、女神様用はホワイトオニキス、スペアはターコイズという具合だ。
「ああ、左手の方にしかポケットがないから。右手の方はヒダが巻く方向と逆だからポケットを付けると前から後ろに手を突っ込むことになるの。それはそうと。このポッケも有能な道具になると思うわ。ド○えもんほど無双じゃないし容量は小さい。全部で32アイテムまでだけど有機物も保管できるの」
「って。じゃ、落とすかもしれないとか。さっきのピアスの能書きはなんだったんだよ?」
冗談じゃないあのピアス。オレはこだわった。
「いいから。いいからぁ〜。ゆ・●・ちゃん」
昨夜はFGOのリアルタイム配信時間が迫っていたのでバタバタな後書きでしたが、本日は少しゆっくり。
現状の設定ですがレビューなどは受け付けないようにしています。今のところ、とにかく最後まで書きたいという点、重視です。投稿を始める際にはTwitterで自分を追い込む告知とかしましたし。でも、まぁ、そういう設定なので、それほどの読者数は期待していなかったのですが、私のTwitterのフォロワー数からは過分と思えるブックマーク数です。て、14人なんですけどね。でも、ちょっと嬉しい。
で、今章についてです。D&Lエディングスの「ベルガリアード物語」はご存知でしょうか?かなり昔のファンタジーなので今読むと古さを感じるかもしれないです。でも、初めて私が手にした時は驚きでした。面白くて一気に読んじゃいました。そこで特に気に入ったのが、アメリカンなお洒落な会話と、フィクションの中のリアリティー。鎧はほおっておくと錆びるし、騎士には従者がいるし……みたいな。
本作もRPG風に旅をさせるのですが、持ち物が膨らみ過ぎるんじゃないかとか、武器や防具が痛んだらどう解消するんだとか……そういう流れでのアイデアの一つが3Dプリンターだったりします。でもそれがあんまり万能だとツマラナイので制約を設けつつ、お決まりのポケットストレージを加えました。
セーラー服についてはリアリティーです。何かをスキャンして覚えるわけですから、新品じゃなかったら少しくたびれた状態を再現するハズです。JCならニーソ、ローファーじゃなくて、白のハイソと運動靴かなとも思ったのですが、これについてはファッション的なバランスですw
あと、キャミがない問題は伏線です。少し先でネタとしても出てきますが、ずっと先で意外〜と思ってくれるかなぁ〜な理由も準備しています。
引用について。
・ゆ○ちゃん、白○薇さまはご存知?マリみてです。個人的にも聖さまラブです。