幼女の罵倒はおちゅきでちゅか?
ということで、晩餐の末席になんとかつかせれもらえることになった。金貨八十枚惜しさに渋々出席を許された体なので扱いはいたってぞんざいだった。アキコはローストビーフ風(何の肉かは知らないが)のものを頬張っていた。ああーー、そんなに大きな口を開けて肉を食べるとリップがぁ〜。ああーー、肉汁がドレスにぃ〜。オレは気が気ではなかった。
ただ、オレも料理にはそれなりに満足していた。ドライではないフルーツはこの世界に来て初めて食べた。甘く適当な酸味のあるコレは葡萄に似ている。独特の香りが芳しい。
毒味については、ベルムートに来てよい魔道具を見つけた。生命活動に有害な毒だけではなく睡眠薬など体の自由を奪う毒も検出できる。毒に込められた悪意のようなものを検出するようだ。小型なのがいい、ネイルピアス型のビーズ状で小さな針が四本、昆虫の足のように生えている。この足で爪に刺さって自立する。爪が伸びでも自動的に適正位置に移動する優れものだ。
しかも毒に近づくだけでパールのビーズが赤くなる。素晴らしい! 銀貨一枚。性能のわりには安かった。こういうものの需要が高いというのは、いかがなものかとも思うのだが。
それはそうと、人形であるオレの内臓器官がどうなっているのか良く分からないが少なくとも味覚があり食道〜胃は存在するようだ。盛られた毒が効くくらいには。ただ、その先はかなり魔法的な存在のようだ。
そもそも排泄という概念はオレにはない。胃から先は謎の魔法装置になっており、機械文明ではあり得ない100%の効率で食物が生命エネルギーに変換される。エネルギーといっても物理学的な熱エネルギーなどではなく、RPG的にいうAPという感じだ。コレも。
AP=M*C^2
の公式になるようだ。どうやらこの公式は人界、天界に及ぶ、質量、エネルギー、AP、MPの等価性を表しているらしい。要は謎の器官は超高効率でかつ放射性物質を一切出さない原子炉ということだ。ただし、MPについては別扱いでアストリアがいなければ、ひたすら回復を待つしかないが。
という無駄話を考えていたら、おざなりではあるものの謁見が始まった。「青龍討伐おめ❤️」。ヘッタクソな字(AIの画像認識機能でそう見えるだけだが)の横断幕は何? 結局、貴族たちは、つまらん会社のリーマンよろしく、なにがしかの名目をつけて酒が飲みたいだけだったようだ。書くのもアホらしい棒読みで王からの祝辞があって、それが終わると早々に追い返された。
だが、意地汚いクソ野郎とはいえ王侯貴族が一堂に会してくれたのは助かった。彼ら全員の顔はしげしげと拝ませてもらった。残念。ま、こんな序盤でアストリアに会えるとも思わなかったが、結局、大枚を叩いた成果は食い物と美味しいワインのみということになってしまった。
アストリアについてはまだ失望するには早いが、気になったのは王侯貴族たちの亜人を見下した態度だ。オレにとっては四つ目の異世界なのだが、差別 問題という点でこの世界はかなり特殊だ。
この国でまだマシと聞いている。確かに法律としてのアパルトヘイトはないようだが、人族の心の持ち様はかなりさもしい。魔族が統一され隆盛になる前は、世界の支配者だったという過去へのノスタルジーもあるかもしれない。アストリアを探して入らねばならないダルク帝国行きは気が重い。かの帝国では亜人居住区域などの分断が法律で決められていると聞く。帰りの道すがら。
「嫌な感じやったなぁ〜。まぁ、慣れて来たけど。お肉も喉に通らんかったわ」
「シロと合流して飲み直そ」
あれだけ肉を食しておいてよく言うよ。オレたちは宿で普段着に着替えシロと合流した。金もないのでオレたちは安い居酒屋風の店のドアを開けた。ちょうど奥の席が空いていた。オレとアキコ、シロはひっそり座ることにした。冒険者連中も多い、リーズナブルな店のようだ。
例によってアキコとシロは肉。オレはおつまみ程度のドライフルーツを注文した。人族中心だがエルフ用に植物性のものも扱っているようだ。で、ちびちびやりながら無駄話をしていると。ああ、どこにもいるよなぁ〜 酔っぱらい。髭面の大男がこれみよがしの大声で。
「ああ、なんだ、この店、臭いと思ったら獣かぁ〜。ああ、たまらんなぁ。店主。こいつらなんぞに料理を出さんでいい。ゴミ箱でもあさって来いや」
呂律が回らず意味不明だが、差別的な言葉を連発していた。店主は、まぁ、まぁと宥めるのだが意に介すことはしない男。アキコへのシンパシーなのだろう、オレにあるまじき行為をしてしまった。
「おい。アキコ。ママのスカートの陰から臆病者が吠えてるようだが。あら。あら。レイシストちゃま。おっぱいのお時間でちゅよぉ〜」
「もう。やめときいやぁ」
とアキコが執りなしたのだが。
「なんだと!」
男は怒りに赤くなった顔で奥の席につかつかと歩み寄った。ドン! 大きな音をたて彼はテーブルを叩くようにして手をついた。大切なワイングラスを倒されては大変だ。
「幼女の罵倒はお気にめちゃなかったかちら♪」
言うなりオレはその手を、ナイフでテーブルに縫い付けてやった。
「あがががぁ!」
店全体が騒然となった。アキコが何を考え、どんな想いで生きてきたのかは首輪の絆で手に取るように分かる。オレの相棒への侮辱は断じて看過できない。お前、いっぺん、死んでみるか?
と、その時。
「待ってくれ! その喧嘩、俺に預からせてくれ!」
今回、キリの関係で少し長めです。
前半はすいません。またしてもあの公式です。もしかして、もしかして、光の速度は「全て」の基準じゃないの? なぁ〜んて、マジで思うんですよね。ということと、謎の器官は、後半に向けた伏線です。排泄という概念がないと言っていますが、腸や腎臓がないという意味です。さらに女の子の体ですが、子宮も卵巣もないのです。ならば謎の器官はどこと繋がり、何をなすのか? です。
で、長めに出した後半ですが、ハードボイルド系ではよくあるシチュエーションだと思います。がっ、これを幼女がやったら? というのがこの物語のメインラインです。主人公の性格づけなのですが、元々人族に悪印象を持っている前提があって、騒ぎを起こすのはマズイと重々知りつつ、でも仲間への想いが強く、正義感も強く、それが元でいろいろあるという感じです。自分が憧れるヒーローまんまかな。
次回、もう一人仲間が増えます!
引用について。
・いっぺん死んでみる? 「地獄少女」っぽいかなぁ〜。




