お洋服♪
コアのオレはオレなのだが、どうもダサイ衣料品を身につけている親友は気になって仕方がない。彼女の装備を見直すことにした。
当然だがこの世界はRPGと違い武具屋に衣類は売っていない。オレたちは石造りの店が立ち並ぶ商店街の一番隅。服屋のドアを開けた。善良そうな店主はエルフの血が混じっているのか耳が三角でおどろくほどの美形だ。この街は亜人に対する差別は少ないようで、各種族の混血が多い。
「アラ、可愛いお嬢ちゃん、貴女の服、なんだか見たこともないわ。ちょっと見せて〜」
いきなり抱きつくようにオレのセーラー服の構造を調べる店主。ホックやファスナーがこの世界では珍しいのはよく分かるが、触り方が妙にベタベタしていたのは気のせいか。一通り検証を終えた店主はやっと本題に入った。
「で、本日は?」
「あのね。私のお姉ちゃんのお服がほしいの」
まぁ、ご要望にお答えしてロリロリな返答をしてみた。この世界の衣類はセミオーダーといったところか。好みの既製品を選び、魔法でサイズを合わせる。衣装屋にとっては各種サイズを準備して無用な在庫を抱えるリスクを、魔法によってヘッジしているということのようだ。
アキコのコーデはオレが請け負った。元いた世界でもよく女友達に付き合わされたものだ。当時はオレに気があるのだろうと大きな勘違いをしていたが、アレは男と思われていない所以だったのだろう。試着室から顔を出して「コレどう?」という彼女の顔に全く恥じらいがないことに気がつかなかった。
今は女子同士でのキャッキャうふふなショッピングだ。迷いに迷って。黒の短い丈のチュニックをトップスにしマスタードカラーのパンツを合わせてみた。防寒用でダサくても手放せないグレーのコートとも相性がいい。ついでに隣の靴屋で、柔らかそうな皮(何の皮革かは知らないが)でできたキャメルのショートブーツも買い込んだ。
それでも女子会は終わらないのだ。雑貨屋によって化粧品も購入した。大柄で大人な印象のアキコには、無難に流れざるを得ないオレの化粧品は不釣り合いだ。チークはオレのピンク系を流用するとして、シャドーはブラウン、リップはオレンジを購入した。いつまでも子供の姿のままのオレからすると少し妬ましい。褐色で目鼻立ちのはっきりした彼女のルックスに映えるだろう。
こういうことが楽しくてしょうがないのは、女子化してしまった証左だが、決して悪い気持ちがするものでもない。というか、コレでオレのポケットストレージの約半分が化粧品で埋め尽くされた。
翌日、オレ、アキコ、シロの三人はドラゴン討伐に備えた練習を開始した。オレがアキコに求めるのは全くオレにないもの。防御力だ。前世では避けるだけで手一杯。ジリ貧でピンチになるケースが多かった。一撃を防いでくれるということは、オレの死の魔法のキャストタイムを稼いでくれるということに他ならない。オレたちは最強の相棒になれるハズだ。なぁ〜マ○ュ。
導かれし運命だろう。どう考えても3Dプリンター指輪を託すのはアキコだと思っていた。オレは彼女に詳細を説明し、指輪を渡した。
「アキコの利き腕は左か?」
「うん、そうや。薬指はあかんかったな」
アキコは左の中指に指輪を嵌めた。
狼憑きである彼女の身体能力は人のそれを遥かに凌駕する。とはいえ、短期間で武技を習得するのは難しく、剣舞の心得しかないオレのコーチングスキルも心許ない。ひとまず彼女には敵の殺しの気を察知してその方向に左手を突き出し、魔力を込めるという単純動作を教えることにした。
練習にはシロの協力がありがたかった。彼がアキコに飛びかかる。彼女は盾でそれを防ぐという繰り返しだ。初日は倒されて擦り傷を作っていたが、二日目は概ね防御可能になり。三日目には気を察知して飛びかかる前にアイギス(仮)を構え魔法を発動させるまでに上達した。彼女は飲み込みも早い。さすが狼の血を引くものだ。
日常系百合アニメでもよくある、やっぱり女の子はショッピングだよね。みたいな。私、服装やお化粧については女性を羨ましく思います。だってバリエーション多すぎ。ただ、トータルで見るとメンドウなことも多そうなので、それだけの為に女の子になりたいか? と問われるとノーなんですけどね。
リーマン経験のある人なら分かると思いますが、男は普通スーツにネクタイで、たまにお洒落していいネクタイしてる日に限って、食べ物の汁をこぼすというマーフィーの法則。女がいいとも思わないけど、男やってるのも、ツマラナイです。
中世風異世界でもありそうで、お洒落と私が思えるコーデって難しいのですが、いろいろ考えみるのも面白いです。多分、ホックやファスナーはないですよね異世界には。そういういえば書いてなかったアキコが褐色の肌設定の理由。土の精・グノーム(グノメ)をイメージしています。小人として描かることが多いのですが、土なので何となく。
彼女のクラスはMMORPGでは盾職。Tunk。モンスターの攻撃を一手に引き受ける人になりますが、ゲームの場合は、ただ受けるだけじゃプレイヤーが面白くないからだと思います。攻撃手段も持っている場合が多い気がします。だからFGO・マ○ュのように、盾攻撃だけというのはないんじゃないかと。でも、ファンタジーならアリですよね。ですので、ちらと書いたアキコの戦い方はマ○ュイメージです。
あと、もしかして釈迦に説法だったらごめんなさい。ヘイトというのはhate。モンスターのムカつき度。モンスターが攻撃対象を決めるためのパラメータです。
それから、もし魔法で衣服のサイズが自由に変えられたら。それだけで、雇用や流通といった経済原理に影響があるんだと思います。魔法のある世界の経済って想像するだけしかできませんが「魔法で達成可能なこと」を箇条書きにして経済学者の方に考察してもらえないかなぁ〜なんて。大学の卒論にしたら叱られるかな。
で、まぁ〜。本日土曜なので長めに書きますが。。。
主人公なんですけどね。女子力があって、メス堕ちするけど、カッコイイメンタリティーのヒーローという、われながら、どう描くんや! みたいな感じではあります。ただ、私のイメージするヒーロー像は「愛する人のために命をかける」ではありません。「クソッタレなヤツに呪詛の言葉を吐きつつも命がけで助ける」って方が、カッコよくないですか?? なんとなくウルフガイってそういうところを感じるから好きなのかもしれないです。
さらにいうと、無意識に設定していて後で気づいたのですが、この主人公って同じ平井さん原作の「8マン(サイボーグブルース)」に少し似ているなと。あれは、サイボーグの体に脳だけ移植されるという設定だと思いますが、超人的な力と引き換えに最愛の彼女とHすることさえできません。この主人公はHはできますが、人形という永遠の檻に閉じ込められているという意味で近いのかなと。




