月に操られし者
よもやま話をしながら日暮れに馬車は村に到着した。ヴォルフ村は木造りの家が立ち並んでいるだけだが、その規模は街といってもいいくらいの広さがあった。大通りは石で舗装され、上下水道も完備している。
マンサの家は大きな木造二階建て。リゾート地の高級別荘といった風情だ。高級木材を使っているに違いない。とても立派な造りの家だ。風呂をもらったがなんと和式。懐かしい檜の香りがした。
入浴を済ませて晩餐の時間となった。アキコとシロには牛か豚かは知らないが大量の肉が振る舞われた。魔的な存在だからだろうか。シロは焼いた肉に不満も言わずペロリと数キロ平らげ、暖炉の前で丸くなっている。オレは例によって木の実とドライフルーツ、パンをワインで流し込むというスタイルだ。
人だったころアルコールには弱かったのだが、この体は全く酔わない。強い味のものを食べられないということもあり、ワインはオレの大好物になっていた。アキコが水のように飲んでいるのはウォッカらしい。彼女もとんでもない酒豪のようだ。
予言を知っているのだから特に隠すこともないだろう。アキコの父にアストリアについて情報がないか聞いてみた。
「そうですなぁ〜。女神様は今おいくつくらいでしょうか?」
「うーーん。天界での時間の概念は人界とは大きく違う。オレがここにいる以上、彼女がどこかに存在するには違いないのだが。二十年程度の誤差が出てしまう」
「それは、ゼロ〜二十歳のどこかの姫君を当たれということですか?」
「彼女のことだ。それなりのポジションを確保していると思うが、どこかの国の姫として転生しているわけではないのだ。一つだけ確かなことはオレと目が合うだけで、彼女は全てを思い出すということだ」
「お役に立てず申し訳ありません。全ての国を回りその王族に面会するゆうこと以外、思いつきません。ひとまずこの国の首都ベルムートへ行くっちゅうことでしょうか? ここから二日ほどの行程やと思います。もちろん、馬はお貸しします」
「それと、無理を承知で一つお願いがあります……」
さすがに各々疲れが出てきたようだ。オレとアキコは用意された客間で休ませてもらうことにした。シロは暖炉の前を動こうともしない。寒がりの狼とか笑えるが。単なる野生生物ではなく「人格」を持っているということだろう。
ツインベッドの居心地のよい客間で横になった。窓越しに空をみると月がない。この世界にも月が一つあるハズだが今夜は新月か。ふと、オレは疑問に思っていたことをアキコに聞いた。
「アキコはオレの元の世界だと『狼女』と言うことになる。月の満ち欠けに連動して体調の変化はないのか?」
「ああ、確かに狼というのは月と深い関係にある種族かもしれん。私の場合は、心なしかそんな気がするという程度やな。女の子同士やから率直に言うと、私の月のもんは、月の満ち欠けとキッチリ連動してる。満月の夜に生理が来て、新月の夜はなんかボォ〜っとする気もする」
「ええ〜っと。アキコさん、てことは新月の夜はもしかして、もしかして排卵日?」
「そうや。ええから、貴女(ジブン)、こっち来ぃ」
「あん♪」
以下略ということになってしまった。そもそもアストリアとのHは百合でも一度だけ経験したヘテロでも全く別物だが、このピアスに操られるだけの場合、オレは受け専門になる。相手側がそれでいいのかとも思う。そもそも、無意識であったとしてもオレからの魅了効果も付加されているように感じていた。
というのが気になって、時々、ヘソの下のあたりに淫紋が浮かんでいないかを確認している。今のところオレがサキュバス化する兆しはないようだ。そうだ。そういう異世界があれば、白粉彫で淫紋タトゥーでもしてみるか? どうせ天界にもどれば元どおりなのだから、アストリアをたまには驚かせてやりたい。
痛いんじゃないか? だって。オレはあの外殻の影響もあり痛みには強いのだ。というか、三度もひどい殺され方をしているわけで、慣れることはないが、痛みについてはプロ級といっていい。特に三度目はやばかった、毒を盛られたと言ったが、アストリアは致死毒であっさり昇天した。
ところが、オレのカップには睡眠薬が入っていただけ。気がつけば手術台に縛られていた。神様謹製の人形。どんな内臓器官を有しているのか興味があるのは分かる。だが、殺してから解剖してほしかった。死の魔法? ああ、とんでもない弱点がある。オレは対象を視認して魔法を使う。魔道具でもなんでもない、厚い皮の目隠しであっさり魔封じされていた。まぁ、お決まりパターンでレイプもされた。ちなみにこれがオレの今のところ唯一の「男性経験」だ。
正直痛いばかりで全然よくなかった。Hは百合に限る。アレ? とはいえ、破瓜の痛みなんて、ひぐらしが鳴いていたわけでもないが、その後、腹を裂かれた激痛に比べればどうということはない。いずれにせよ、コレは味方であるはずの人族の行いだ。
ファンタジー世界では魔族を悪様に言う傾向が強い。確かにこの異世界群でも彼らは人を喰らう。ただ、オレが経験した世界に限っていえば、喰らう前に止めを刺す優しさは持っているようだ。趣味で加虐行為を行うのは人族だけのアビリティーだと思う。
里井雪の名前は、某ラノベ公募の際に作ったものですが、今までは完成しない小説用にしか使っていませんでした。音声作品を書くようになって「そういえば」と思い、使い出した次第です。昨日、ある声優さんのニコキャスに出る機会があって、初めてこの名前で「出演」しました。結構、恥ずかしいです。
ということで、アキコちゃんですが百合というより、彼女は狼女ですし種族・性別は気にしない。好きな人は好きという感じで描いたつもりです。記憶を共有してしまった相手にシンパシーを感じないハズもなく、盛りがくれば必然のHかなぁ〜と。未成年でお酒ガバガバ飲んでますが、まぁ、人じゃないのでいいでしょ。
天界と人界についてなのですが、エピローグまで考えていた法則を書く機会がないので……。双方が動いてるとしたらどうでしょう。光速に近い速度で動けば浦島太郎現象も起こるし、もしかしたら、相対性理論に逆らって光速を超えるかもしれない=時間遡行する。みたいな。という想像があった上で、双方の時間の概念は違うので誤差があるとしています。
淫紋やレイプの件わぁ〜。いいかなぁ〜。伏線です。あと、この世界での魔法は、見て、イメージして、そのイメージが具現化するという法則で考えています。ですので、例えば治癒魔法でも、外傷は簡単に治るけれど、内臓は難しいなどの制約を設けたつもりです。
引用について。
・腹を裂かれると言ったら古○梨花ちゃんですよね。ちょっとイメージしています。




