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百合磁石なオレ(♀)が異世界で「受ける」お話  作者: 里井雪
桜色の魔法

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刺客(アサシン)

 なごりおしそうに渓谷に続く城塞都市裏門から見送る二人を残して、オレは渓谷を抜けんと歩き出した。人族との比較ならそれなりの持久力はあるものの、こんな小さな体だ、無理をするわけにはいかない。この時間ならバテない程度の早足でも日が暮れるまでには森林地帯バルツバルドの森にたどり着けるだろう。雲も出てきたが、天気は夜までは持つと思われた。


 一応、地図はもらってきた。だが、この異世界は魔法ファーストで発展してきた。大きな建物を建築するにしても魔法を使ってしまう。すなわち、精密な測量などする必要がないということだ。そもそも三角関数という概念はこの世界には存在しないようだ。


もらった地図はトポロジーとしてだけ正確で距離感などはデタラメといった代物だ。○○まで徒歩○日というのが唯一の目安ということになる。で、あるが故に街道を外れるというのは自殺行為に近い。


 サンクトブルクはソルト連邦の首都という位置づけだが、城塞都市である今の領域が国のほぼ全て、渓谷を抜ければ次の国の国境だ。かつてソルト連邦はサンクトブルクから北に広がる広大な地域も領土としていたが、近年の魔族侵攻でその大半を失っている。サンクトブルクはまさに最後の砦というところだ。


 万一、万一、あの王。今までの経験からあの目は信用できない。が、刺客を差し向けているとすると、渓谷を出たあたりで襲われるだろう。さすがにそれはないと信じたいのだが。……ダメだ。ネガティブ思考は災いを呼ぶ。背後に五名。ずっとつけられていたのだろう。こんなに距離が詰まるまで気づかないのは、相手はプロに違いない。


 うち四名が距離を詰めてきて一名が後方に下がった。一名は報告役。四名に襲わせてあわよくば命を貰い受ける。失敗の場合でもオレの魔力の回復度合いを見て、新たな刺客を出すか否かを決める。そういうことだろう。コレは劇場型で殺す(やる)しかないのか。MP(マナ)の回復は幾何級数的なグラフを描く。


 まだ昨日今日ではそれほど大きな魔法は使えない。MP(マナ)ゲージなどという便利なものはないから、どこまでやれるかは勘に頼るしかない。四名ならギリギリでMP(マナ)は持つが再びガス欠になる……くらいか?


 だが、報告者はオレが既に手強い状態だと報告してくれるだろう。クソ。たとえ二人に「あん♪あん♪」言わされてももう一晩泊まっておけば良かった。


 後悔を先に立たせて後から行けば杖をついたり転んだり。もうままよ。こんな序盤で乾坤一擲の勝負をすることになろうとは。ありったけの魔力を込めてオレは死の魔法を唱えた。みるみる桜色の霧が四名の刺客を包み込む。フラリとしたが何とか持ち堪えて、ロ〜リィな大音声で芝居がかった台詞を吐いた。


「そこの者! 帰って王に伝えよ! 我が腕は思いの外長いとな」


 ふぅ。これで何とか凌げるだろう。暗くなってしまったがあの木の下なら雨露は凌げそうだ。さすがに体が重い。火を起こす気力もないので、水筒の水を飲み木の実をかじって夕食にした。


 寝袋を出して寝ようかとしたその時。風向きが変わったのだろう濃密な獣の匂いがした。

できるだけ毎日定時にと考えて前々回から予約投稿を使うことにしています。私用がなければ23時に入ります。ちょっとずつ、ちょっとずつブックマークが増えてきて30到達。嬉しいです。励みになります。ありがとうございます。


Hシーンが続きましたが、今回は一難さってまた一難となります。昨今のアニメの傾向を見ていると、ピンチになってもその話(放映回)の中で解決することが多い気がします。その方が、観ている人は緊張感を1週間引きずらなくてすむという配慮かな。でも、コレは1日ですから。昔風にしてみました。


ところで、異世界物の設定で思ったんですけどね。「あまりに強い力は味方を恐れさせピンチを招く」と。リーマン経験のある方ならご存知かもですが「部あって社なし」とか聞いたことないです?「軍あって国なし」なんかも同じ意味です。自分の部の利益=自分の地位を守ることを優先して、大きな目で見て会社のためになることをしない部長さんとか意外に多くないですか?


王様って本当に世界のことを考えられる「人物」とは限りません。トンデモな力を持ったヤツが出てきて、ピンチは救ってくれたものの、海の物とも山の物ともつかぬ。いつか寝返って牙を剥かれるかも?そんなことになったら、自分の地位が危ないじゃん。と発想するんじゃないかなと。


一国を滅ぼせるような力を持ったヤツは、用が済んだら早々に始末するに限る。世界のことなんて知ったことか。あるかなぁ〜と思い書きました。


この手の人、世の中には意外に多くて、でも、ケシカランと糾弾するのはやり過ぎな気もしますが、アナシア姫は小物な父にうんざりしている大局の見える人として対比しています。なんとなく、これはD&Lエディングスの影響なのですが、この物語でも、女性の方がしっかりしていて、強かで、大局を見ている人が多いです。


もう一点。今日は後書き長いなぁ〜。

もし、魔法があったら建築物なんて測量しなくても建ってしまうのでは?みたいな。魔法を前提とした文明の発展形態はどうなる?というのもちょっとテーマです。測量する必要もなければ三角関数なんて誰も気にもとめないんじゃなかと。電気もないですし。いきおい、距離という概念はアバウトになる。という設定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 10/39 『トポロジーとしてだけ正確』……一見難しい表現ですが、これはひどい評価だぁw [気になる点] 『幾何級数的なグラフ』 ……二次関数のグラフをイメージしたのですが、合ってます…
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