1-1 親友からのメール
幼馴染みから、なにやら頼み事をされた話。
フレッドからの通信は、ビデオメールだった。
昨晩にでも撮った物の発信を、秘書に頼んでおいたのだろう。
『やぁ、ディー。久しぶり。相変わらず元気でやってるようだね。
活躍の噂は僕の耳にも聞こえて来るよ』
モニタの中ではブランド物と思われるスーツをばりっと着こなした幼馴染みが、にこやかに話しかけている。
で、内容はと言えばやはり仕事の依頼だった。ああ、でもフレッド本人からの依頼ではなく、知り合いからの物らしい。詳しいことが解らないので即答は出来ない旨をメールで返信して、そちらへ向かうと添えておいた。
フレッドに会うのも、随分久し振りだ。
以前は結構会ってたけれど、最近はお互い忙しくなってしまって今では年に一度も会えれば良い方だ。
仕方がない。こっちはしがないアクティブコンダクター(……と言えば聞こえは良いけれど、いわゆる「宇宙の何でも屋」だ)でしかないけれど、フレッドは今や宇宙に名だたる大企業の若社長だもんな。
同じ孤児院に居た幼馴染みの中では、一番の出世頭と言える。
「ねぇねぇ、ライトぉ。フレッドって、前に言ってた『社長さん』?」
俺の肩に座ったシェーラが聞いてくる。そう言えば、シェーラはまだ会ったことないんだっけ。
「え、ああ。エルツベルガーって乗り物とかの会社知ってる?」
「知ってる知ってるっ!! TVで見たもの! あの『三輪車から宇宙戦艦まで』の会社でしょ?」
いや、確かにそうだけど……。やっぱり、CMの影響力って絶大だなぁ……。
「そうだよ。その会社の社長が、幼馴染みなんだ」
「へぇぇ、どんな人? どんな人?」
全く、こういう所だけは好奇心旺盛なんだから。
「んー、そうだなぁ。頭が良くて顔も良くて、人柄も良い……って、結構理想的だよな。
おまけに独身だって言うんだから、マスコミじゃなくたって放っておかないか……」
近頃では経済関係の記事だけでなく、ゴシップ紙や週刊誌なんかにもよく写真が載ってたりする。
何だか、今更ながら『立場の違い』なんて言葉が頭の中をよぎった。
かたや、風来坊の何でも屋。
かたや、大企業の若社長。
………だんだん、暗くなってきた。やめだやめだッ、考えたって仕方ない。
それに俺は、自分の決断を後悔してはいないんだし。
「あれ、そりゃそーと去月はどうしたんだ? さっきから全然見てないな……」
ちなみに、今は昼前だ。俺はメールを返信した後、あんまり眠いんで船のオートパイロットをセットしてから部屋で爆睡していた。
「ああ、ライトが起きてくる随分前に任務だとかって出て行ったけど」
「そ、っか。あいつ、留守なんだ……」
もし良ければフレッドにも紹介しておこうかって思ってたんだけど。でも、去月のあの格好じゃ正面玄関の警備員に止められる、かな。そんな情景が浮かんできて思わず吹き出してしまった。
「な、何よぉ、ライト、いきなり気持ち悪いなぁっ!」
「ああ、悪い悪い。……ちょっとね」
さすがに、全身黒尽くめは怪しすぎる……。
何でも、組織の方からの指示らしいけど、あんな格好で隠密任務ったって、余計に目立つような気がするんだけどな。
「そういや……任務中でなくたって、あの格好だよな?」
何故だろう? 気になった。そして、その疑問は声を伴っていたようで。
「え、何か言った?」
と、シェーラに聞き返されてしまった。
「あ、去月ってさ……船の中でもずっとあの格好だなって。別に、任務中って訳でもないのに」
シェーラがうーん、と考え込む。
「そう言われてみれば……そうよね。別に、船の中なら顔のトコくらい脱いでも良さそうなのに。
あ! やっぱ、忍者だけに、素顔がばれるとマズイのかな?」
だけど、相棒や仲間に面が割れた所で、何がマズイんだ?
「……そりゃ、その手のドラマの見過ぎだって……。
実際、本星じゃ誰もあんな格好してなかったんだし」
そう、俺と去月の出会いは忍者組織の本星での事だった。
半月ほど前、俺はとある噂の真偽を確かめるべく、無謀にも忍者組織の本星へ単身赴いたんだ。