何なんだお前は――!
ヒノは普通の住宅街に建っている二階建ての自宅前にまでやって来た。
それから一旦帰宅……することはせず、隣に建っている、ヒノ宅よりも綺麗でデカい家のインターホンを押した。
一分間待っても目当ての人は出てこなかった。
「……呼び鈴に気づかなかったか?」
もう一度インターホンを押した。
「……」
さらに一分待った。お目当ての人がでてこない。
ガチャガチャガチャガチャガチャと何回も連続で押した。連続で呼び音が鳴る。
「……?」
さらに一分。外出中なのかもしれないと仕方なく自宅に帰ろうとして。
「あれ?ヒノ君……どうしたの?」
はきはきしているけど優しく気丈で落ち着いた聞きやすい声がかかった。
ヒノは、ついつい顔を緩める。
それが少し照れくさくて、きりりとした表情にしようとしたが無理だった。
声をかけてきたのはヒノが今会いたかった人物である、岩戸春香だ。
ヒノが小学生の頃にたまたま家が近いことで知り合って、よく交流している相手である。
年上の幼馴染というモノだ。
岩戸は成績も良く偏差値71の女子高校に通う三年生。
見た目は鮮やかな黒いセミロングという髪型をしたややたれ目気味の優しそうな見た目をした女子だ。
ちなみにスタイルは、バランスがいい。
そんな彼女はヒノにとって憧れの年上である。
「ヒノ君?またなんか起きて家の中に入れなくなったの?相変わらず不運な……」
「いや、そうじゃない……不運みたいなのはあったけど家は入れますし……」
「じゃあ何で来たの?」
ヒノは岩戸に何となく会いたくなったのだ。
だがそんなは理由を思春期真っさかりのヒノは言うのが恥ずかしかったので言わない。
「ってちょっとヒノ君?その腕どうしたの!?」
岩戸が慌てた、アンズに撃たれたヒノの腕の怪我を見たのだ。
「大丈夫です、意外とこの怪我浅いんで」
ヒノはかっこつけて嘘をついた、正直傷口は怖くて出来るだけ見ないようにしていたから深刻さなんて"千切れてないよなー"というくらいしか知らない。
「確かに浅いけど化膿したりしたらどうするの?……ヒノ君は応急処置できる?」
「やり方は知ってます、道具は一つももってません」
またかっこつけた、やり方はほとんど知らない。
嘘ばっかりである。
「じゃあちょっと私の家にあがっていきなさい、治療するから」
「え?」
その言葉が嬉しくて、ヒノは自然と無邪気に笑っていた。
ヒノの手を引いて岩戸はすたすた家に入っていく。
その手はとても柔らかくヒノの鼓動を速くさせた。
命のやり取りをした後だというのに。
そしてヒノは岩戸の小奇麗に整理された部屋にあがり、簡単な治療を受けた。
岩戸の行った怪我の消毒は痛いけど、優しい手つきで、なんだかぽわぽわとした気持ちになった。
そして「ありがとうございました」と、ヒノは岩戸に感謝を告げて家に帰った。
「……ただいまー」
玄関で大きめの声を出す。
「おかえりー」
ヒノの母の声がリビングから返ってきた、今いる位置からは見えないが家にいるようだ
「まだご飯できてないから、遊んでていいわよー」そして母も大きめの声で返してきた。
「わかった――!」ヒノも大きめの声で返す。
そうしていると
「動くのが面倒だからって声だけでコミュニケイトしてんじゃねえ!うるせえ!そんくらい面と向かって話せ!」
父親の怒声がリビングから聞こえてきた。
そして「貴方も父としてそのくらい面と向かって叱りなさい!」と母の文句が聞こえてきた。
それに「うるせえ!俺はうるさいって注意したらお前もうるさいって文句言うタイプが嫌いなんだよ!」と言い返す父、ヒノはああまた軽い口げんかが始まったなあと多少不快に思いながら階段を上がって自分の部屋に向かった。
ヒノの部屋は普通としか言いようがなかった、勉強机と衣類を入れたタンスとパソコンがあり本棚には漫画や、読んだだけで身にはなってない格闘技の指南書とか教科書が入ってる。
あと、小学校の修学旅行で買った木刀も立てかけてある。
ヒノが”なんで俺コレ買ったんだろ?”と思う程のシロモノである、あんまりクオリティが高くないヤツ。
ヒノはここにあるパソコンでロボットゲームをしようと思っていた、それで気でも紛らわそうと。
しかし部屋の空気が悪かったので換気しようと窓の鍵に手をかけた。
そして窓を開け外の空気を吸いながら、おかしな者を見た。日が落ちてきているのでよく顔がわからない。ただ、人の影が家のすぐ近くにいることだけわかった。
「なんだ……お前」そのおかしな人物はヒノを下から見上げていた、そして口を開けて笑顔を向けてくる。
「ひっ!?」突然だった、そのおかしな人物はヒノ宅の壁に向かって走ったかと思うとパルクールで壁を登ってくる。
つい、ヒノが恐怖を声にしてしまう程速くて怖い、まるでゴキブリだ。
「くそッ!」危険を感じ、窓を閉じようとしたが、それよりも早くおかしな影は窓枠に手をかけヒノを妨害する。近くで見るとヒノはこいつが小柄な女だと理解した。
少女はすばやくその体をヒノの部屋に投げ出すように入り込んできた。プロの戦争屋かと見まがう体捌きである。
少女は、ゆっくりとヒノに体を向ける。
「もお、なんで逃げようとするのさ?」
その少女はアンズだった。
「なんだよ……なんなんだよ……」
ヒノはわなわなと震えた、意味不明な変な奴に対する、恐怖と怒りに。
そして、興味に……
「なんなんだよお前は―――――――――――――――――――――――――――――‼‼‼???‼?‼?」
ヒノは叫んでいた。