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暴走

 「それじゃ、いっくよーーーー!」


俺の目の前でラーナは詠唱を始めた。


詠唱を始めると術式のような文字がラーナを囲むようにを弧を描きながら回って


いる。


(すげぇな。またこの感じかよ)


俺の体に伝わってくるそれは前に感じたラーナの魔力だ。


いつにもなく真剣な表情のラーナが「えいっ!」


「うわあぁぁぁ。なんなんだコレ」


ラーナの魔法が成功?したのにも驚いたがその魔法の効果で急激に体が重くなっ


たことに俺は戸惑いを隠せなかった。


だが、動けないほどではない。


「ね、すごいでしょ」


満面の笑みでラーナから放たれたその言葉は俺を不快にさせた。


「これね、じゅうりょくまほうって言うやつなの」


(あぁ、重力魔法ね......)


今、ラーナが三歳児だと言う事を忘れていた自分がいた。


俺は終始、満面の笑みを浮かべるラーナに目にもの見せてやろうと思い、ラーナ


の重力魔法で重くなった体でスクワットに腕立てと筋トレをして見せた。


この行動がいけなかったのだ。頬を膨らませムキになったラーナが更に魔力を注


ぎ込んだ。


魔力が暴走し、とても三歳児には止められない領域に達していた。


「ぎゃあぁぁぁぁ。ラーナ、潰れる......体......」


俺はと言うとそれどころじゃなかった。


「痛い痛い...(あ、多分ダメだこりゃ......)」


意識が遠のいていく俺の耳にかすかだがカルシアの声が聴こえた。


そこで俺の意識は途絶えた。




 (ん、んぅ......?生きてる......のか?)


「わ、生きてるぅ~うわぁぁん。クラインごめんなさい」


意識が戻るとラーナが鼻水を垂らしながら泣きじゃくって謝って来た。


隣にはカルシアもいた。


あー。怒られるなこりゃ。


「私がたまたまクラインの悲鳴を聞いたからよかったものの。コソコソ魔法を使


うくらいなら私にも一声かけてちょうだい。いい?」


そう言い残すとカルシアは部屋を去った。


カルシアはもっと怒ると思ったけど、それより俺が助かった安心の方が大きかっ


たのかもしれない。


ラーナはと言うと、泣き疲れたのか俺の膝に覆いかぶさるような姿勢で眠ってし


まっていた。こういうところはまだ三歳児だなと思える。


「クライン......死んじゃう......」おい!夢の中でも殺そうとするなよ!


おやすみ、ラーナ。と無意識に頭を撫でてやる。


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