ラーナ
カルシアから貰った地図は黒く塗りつぶされた箇所がいくつかあり、カルシア
に尋ねると、それは人間が立ち入る事が出来ていない場所や、立ち入っても生き
て帰れないことから黒く塗りつぶされた部分が未だ謎に包まれているという。
地図に記されていたのは城のマークの王都や、その周りに点々と存在する街や村
だけだった。
冒険者ギルドに登録できるまであと二年ある俺は情報収集と日々の鍛錬に明け暮
れていた。
そんな俺にラーナが言った。
「そんなに毎日なにやってるのさ」
「筋トレさ。(って言っても分からないか......)」
「あのね、クライン......」
言いかけたラーナの言葉に「なんだ?」と耳を傾ける。
「カルシアにクラインも努力してるんだしラーナも何か頑張りなさいって言われ
たの。だからあたしもね......魔法頑張る!」
あぁ~、そうだ。嫌なことを思い出した。
カルシアが「ラーナの魔力は感じるがクラインの魔力は感じないとかなんとか
言ってたな、確か」
それでこのザマだ。
俺にも少しは魔法とか魔力に興味があったもののカルシアの一言で今は魔力より
も肉体面を鍛えることに努力と時間を注いでいると言う感じだ。
「あ~そうか、頑張れよ!」と、素気ない返事を返した。
それもそのはずで、つい最近知ったのだが......
ラーナは男の子じゃなくて女の子だったーーーーーー!
(そりゃ、おかしいと思ってたさ。「あたし」とか言うもんな。それに日に日に
可愛くなりやがる。うん。そしたらな、女の子だった)
(え?なに?ついてるかついてないかで分かるだろ?......分かるわきゃねぇ
よ!つい最近まで乳児だぞ?寝相は悪いし、いびきはかくし、女の子と知ってか
ら会話って会話できてねぇよ!)
前世では異性と会話なんてゼロに等しいよ。
そんな俺があんなみるみるうちに可愛くなっていく女の子と会話なんて......
むりぃぃぃぃぃぃぃい!!!!
筋トレのやり過ぎか、はたまた動悸が荒ぶっているのかは分からないが呼吸が落
ち着かない。
こんなことじゃハーレムなんて言っているだけで終わりそうだ。
心の中でそんなこんなしていたら既にラーナは俺の部屋から去っていた。
「魔法かぁ......」
つい、口にでる。
ラーナの言葉が気になり、魔法とやらを生で見たい俺はラーナの部屋に行ってみ
ることにした。
別に覗き見ようとかそんなんじゃないぞ。まだ純な三歳児だぞ。
ラーナの部屋の前で俺は身動きが取れなくなったね。
魔力やら魔法やらのなにも分かっていない俺でもビンビン伝わってくるこれが魔
力なのかという新しい感覚に。