49、二月九日、午前八時三十九分。 第二変電所地下ケーブル坑内。
相手の後ろ側に回り、バックをとる。
ジャグスはそれだけを考えて、もう一度左から声をかけた。「あんた、なぜ殺し屋になった。そんな姿になってまで」
ラルジャンは即座に鮮血を飛ばしながら光子銃を発砲し、見えない左側に向かって答えた。「好きでこの姿になったわけじゃない」
ジャグスに撃たれたのも首の左側だった。血が止まらない。それだけでなく首を走る導線のどこかがとうとう切れたか、頭に十基備えた機銃のうち七基がもはや動いていない。虚ろになる意識の奥で、残る三基が停止するのも時間の問題だと思った。「俺は昔、『東アジアでのこの国の権益を守る』とかなんとか、そんな綱領を掲げる団体に入ってた。詳しくはとっくに忘れちまったが…」
「主義主張があったわけだな」右上から声がして、何かが飛び降りてくるのがわかった。
ラルジャンが身構えるのは一瞬、遅れた。
背後から絡みついてきたジャグスの腕は、ラルジャンを羽交い締めにし、頭の機銃へと触れた。ラルジャンは発砲したが、ジャグスは機銃のひとつをつかんで渾身の力を込めるとへし折った。
「主義のために殺すのは馬鹿げてるんじゃねぇのかい」言いながら、後ろに腕を伸ばしたラルジャンのその手をかわして、ジャグスは数メートル背後に飛びのいた。
「主義のために殺すのは馬鹿げてるって言ったよなぁ?」カメレオンは消えながら、くりかえした。
「あんた、なぜ主義を捨てた? 何があった?」
ラルジャンはその言葉に記憶をたどった。




