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45、二月九日、午前八時三十二分。
都心に拠点を置く新聞・テレビおよびネットニュース各メディアは既に内々に移民省長官暗殺の報をつかんでおり、現場記者たちとデスク・上層部とのあいだで「報道すべきか否か」を巡って激論が交わされていた。
先頃の官房副長官暗殺についても事実上の報道管制を受け入れたばかりであり、これ以上の沈黙を守ることは、報道機関にとって耐えがたいものがあった。
テレビ各局はニュース速報のテロップを流す準備をし、ネットニュースも新聞も、いつでも報道できる体制を整えていた。
だが、誰も、本当は何が起きているのかを知らなかった。
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大雪のために交通網が麻痺したことは、ネット内でたちまち情報として拡散した。
確かなものも、まことしやかなデマもあったが、停電が広がるにつれ、ネットはつながりにくくなり、やがて通信そのものが遮断され、なおいっそう人々の不安と好奇心を煽ることにつながった。
各プロバイダーのサーバーは、のきなみダウンし、公安第七課が持つ非常回線以外、公的機関の緊急連絡も不可能な事態となった。
誰も何が起きているのかを知らなかった。




