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蜥蜴狩り  作者: 惹玖恍佑
38/67

38、二月九日。 ジャグス。

ジャグスは目覚めた。


どれほど時間が経ったのか?


クリータスの姿はなかった。


代わりに、ジャグスの前には生きている死体となった漁師がいた。二人は海辺に立っていた。


これも夢か?


ジャグスはうろたえてルガーをかまえたが、漁師にはジャグスが見えていないようだった。


それもそのはず。漁師は何者かに手指を食われ、目を潰され、耳を食いちぎられていた。海から上がってきたばかりなのか、その生気のない全身を藻や海草が覆っていた。


「死んでるのか?」ジャグスは声をかけた。


ああ、死んでいる。私は返事を返した。


「誰だ? どこにいる?」緑のカメレオンはぐるぐる回る目で辺りを見回したが、むろん私の意識がこのものに見えるはずがない。


この漁師は命の掟を破ったのだ。


「どこから話してる? 出てこい!」


あわてずとも、すぐにわかる。きみにこの男の姿を見せたかった。


「こいつの?」


いま、きみの友人に言われたろう?


命の不思議はどんな言葉の修辞を尽くしても、誰もたどり着くことができない。


愛すべき命。祝福されるべき命。そんな卑小な言い方では命の不思議の端にもたどり着けはしない。そう思わないかね?


「こいつは…死んでるのか?」


そう。死んでいる。この男は掟を破った報いを受けた。これからこの男は自分の家族を殺し、妻を犯し、やがて海へ帰っていく。


「あんた、誰だ? こんなものを見せて、俺に何が言いたい」


いつか命の不思議に迫る言葉を見つけ出すまで、生き延びたまえ。


生き延びよ、悪辣なる命のジャグスよ、生き延びて、かけがえのない命の不思議の、その秘密にほんの少しでも触れたまえ。その不思議にきみは心動かされる。そう、きみにも『心』があるのだよ。だが、それをすぐに愛だの生命の神秘だのとわかったような屁理屈に結びつけることもしない。きみは凡百の感情表現を信じていない。


まったく、きみほど私の姿を見せつけるのにふさわしい存在がいるだろうか?


「俺に何を見せる気だ?」


その質問に答えている余裕はなかった。


漁師がジャグスに気づきもせず、村へ足を向けて歩き出すと、海からは次々と魚人たちの手が上がり、ジャグスの両脚をつかんで海中に引きずり込んだ。


不意をつかれたジャグスは暴れながら、しかし大量の海水を飲み込み、溺れて、また気を失った。

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